11月に5歳になる娘がいる。結婚から10年ぐらい経ってから生まれた子で、それまでの間、夫婦で旅を楽しみ、よくお酒を飲んだ。子づくりは、自然の成り行きに任せていたが、互いに年を重ねたのを機に不妊治療に臨んだ。私向けの検査も多少はあったが、明らかに妻の方が通院回数は多い。治療が進んでも、経過が順調とは限らない。妊娠20週手前で先天性の異常が判明。母体の安全を優先し、死産に近い経験もした。妻は心身ともに深く傷つくが、男性も少なからず心に負担がある。子どもを欲する気持ちに、それこそ性差はないからだ。今月1歳の誕生日を迎える息子は自然妊娠だった。我が家は妻の視点、私の視点から、少子化の話題に寄り添える。日本の少子化は深刻で、世の中の議論は活発のように見えるが、働き方、産休、育休などの話題は女性視点が多くなる。妊活、育児、家事に励みたい男性もいるし、強くキャリアを意識する男性もいる。なんだか発言しにくい雰囲気に、息苦しさを感じる男性社員がいることを踏まえ「女性活躍という言葉自体が時代遅れ。性差の違いを受け入れ、平等に話し合えばいい」とは覆面座談会に応じた女性社員の指摘である。化粧品、日用品は老若男女問わず接点を持つ稀有な企業がそろう。少子化という社会課題に根本から向き合える世論形成。それを主導できる業界だと思うから、多くを期待したい。

月刊『国際商業』2023年10月号掲載