2022年の中国の美容・パーソナルケア市場の変化を振り返り、次の一手を打つためのヒントになる11のキーワードを紹介します。

1. 成長の鈍化

新型コロナの発生後、中国の美容市場は強い回復力を示し、2021年には堅調な成長を達成しました。

しかし、2022年初頭の新たな感染拡大による事業活動の縮小やサプライチェーンの混乱は、美容プロセスの簡素化を招き、市場の成長を鈍化させる可能性があります。

2. 消費者の説得が難しい

ミンテルのリポート「The Green BPC Consumer – China – 2022」(※1)によると、消費者にとって安全性と効能は依然として最優先事項ですが、均質化と競争の激化により、消費者の目が肥え、購買時に納得させることが難しくなっています。消費者の半数が「絶対に安全な製品」を、43%が「医療効果のある製品」を求めています。消費者は、高い安全性と有効性をブランドと結びつけて考えるため、これからのブランドは、高い安全性と優れた有効性の両方を示すことが、消費者の満足を得るために必要なのです。

3. クリーンビューティー

この2年間で、中国のクリーンビューティー市場は一定の発展を遂げました。パイオニアたちは、無添加、環境に配慮したパッケージ、動物実験なしなどをうたい文句に、現在の市場の状況や消費者のニーズを踏まえて、独自の方法で「クリーン」を主張し始めているのです。

こうした消費者ニーズに対応した「クリーン」の試みはまだ緒に就いたばかりですが、クリーンビューティーがより広く普及していくにつれて、単に環境や企業倫理を訴求するだけでは市場をリードできなくなると考えられます。そうした状況への対応として、よりクリーンビューティーを高いレベルで求めるブランドにおいては、個人の価値観や信念をサポートする特定のライフスタイルをうたうようになっています。

4. 新形状とテクスチャー

フェイシャルスキンケアの購入要因の上位として、消費者に多様な感覚体験と喜びを提供するフォーム/テクスチャーイノベーションが挙がっており、ブランドにとってより多くの機会をもたらすものだと言えます。ミンテルのリポート「Women’s Facial Skincare – China – 2021」(※2)によると、2021年以降、消費者の美容プロセスとして浸透した「肌のためのオイル」というコンセプトに加え、多くのフォーム/テクスチャーイノベーションの中で、フェイシャルオイルなどが非常に注目されるようになるとされています。QuadhaやZhubenといったブランドが代表的です。

5. 機能性重視のスキンケア

1年前と比較すると、中国の美容ブランドは、効能、製品の品質、製品の革新性の面で消費者からより高い評価を得ており、多くの国内ブランドが、特定のスキンケア・ニーズ(敏感肌の悩みやエイジングケアなど)に対応することで、高機能スキンケアのトレンドが台頭しています。国内ブランドは、ユーザーエクスペリエンスの向上やプレミアムなブランドイメージの構築など取り組むべき課題はあるものの、今後さらに競争力を高めるポテンシャルがあることを示しています。

6. 新しいソーシャル・メディア・プラットフォーム

ミンテルのリポート「Attitudes Towards Prestige BPC Products – China – 2022」(※3)によると、Tiktokは今や高級スキンケア製品に関して、ブランド発信ではない重要な情報源になっています。

また、Tiktokを閲覧する女性消費者と小紅書や微博(Weibo)を閲覧する女性消費者との重複は少なく、これら三つのグループの重複はわずか11%にとどまっています。これはブランドがこのチャネルを活用することで、従来とは異なる多様な消費者層への露出を増やし、消費者層を拡大できることを示唆しています。今後、従来の総合ショッピングサイト(天猫や京東など)からTiktokチャネルへの移行が進み、EC商戦時期のビューティービジネスの成長をさらにけん引していくことでしょう。

7. エモーション&ウエルネス

ミンテルのリポート「Age Management Products – China – 2022」(※4)によると、消費者は依然として若々しい外見を求める一方で、セルフケアに対する意識の高まりや健康全般への注目から、健康的な加齢を受け入れるようになってきており、アンチエイジングに焦点を当てるのではなく、よりよいライフスタイルに対するソリューションを含む「エイジングケア」を総合的にアプローチするブランドが増えてきています。

8. スキンケア

現在も続くパンデミックは、カラー化粧品など一部のカテゴリーの使用シーンと使用率をたびたび低下させており、中国消費者月報(8月)によると、感染対策によるロックダウンが解除された後は、消費者は他のカテゴリーに比べて顔のスキンケア製品、特に顔の美容液と目の美容液を購入する可能性が高くなることが分かっています。ミンテルは、消費者と供給側の両方において、美容プロセスだけでなくビジネスにおいてもスキンケアの優先順位が上がってくるものと予測しています。

さらに、スキンケアのトレンドも、フェイシャル・スキンケアがカテゴリー成長をリードしている理由の一つです。このトレンドは、フェイシャル・スキンケアの関連カテゴリーにも影響を与え続けており、カラーコスメティック・カテゴリーでは、下地と口紅の両方で栄養と保湿のコンセプトを強調し、ボディケア製品でも天然成分や保湿効果などのスキンケアコンセプトを導入しています。

9. バイオテクノロジー成分

この1年でより深く根付いたのは、「朝はビタミンC、夜はビタミンA」といった成分の組み合わせや、ヒアルロン酸の組み合わせなど、よく知られた効能成分の強力な組み合わせといったことです。この革新的な形態の出現は、一つの強力な成分配合の時代の終焉を告げただけでなく、総合的な効果を重視する成分の組み合わせによる競争、という新しい流れを導きました。今後、こうしたバイオテクノロジー成分にまつわる話題はさらに増えるでしょう。前述のリポート「Women’s Facial Skincare – China – 2021」によると、回答者の53%がバイオテクノロジー成分が効能のあるスキンケア製品を選ぶ際の主要な要因であると考えています。

10. マイルド

効能重視が主流となる一方で、「やさしさ」も見逃せない要素です。ブランド開発においては、マイルドでナチュラルな成分への置き換えがセグメンテーションのトレンドになる可能性があります。例えば、レチノールを天然成分のバクチオールに置き換えることで、敏感肌でも使用しやすく、優れたエイジングケア効果を発揮することができるため、今後、注目すべきマイルドな有効成分としての可能性を秘めています。

11. サステナビリティ

国が持続可能性へ注力し続け、金融など多くの分野でESGへの取り組みが進む中、投資を呼び込んだり、より高いESG評価の恩恵を受けるために、事業活動にサステナビリティを取り入れる中国企業が増えています。同時に、この概念がより広く多様になるにつれ、ブランドの持続可能な行動は環境保護にとどまらず、人々や社会問題への配慮がより顕著になることでしょう。他者の価値観を尊重すること、特定のライフスタイルを推進すること、少数派のアイデンティティを尊重すること、これらはすべて人と社会の持続可能な発展に寄与することでしょう。

消費者の視点に立てば、パンデミックによる景気後退と消費者心理への打撃の後、手頃な価格と求める結果とのバランス、そして持続性といった点により消費の焦点を当てることになるでしょう。より安価な製品の選択、必需品ではない製品を後回しにする、より費用対効果の高い多機能製品の追求、買い置き製品の使い切り傾向、衝動的な消費の抑制など、より賢明な購買行動をとるようになると考えられます。必需品でコストパフォーマンスの高い製品は、消費者のショッピングカートの中で長く活躍すると期待できます。

参照(ミンテルのリポート)

1)The Green BPC Consumer-China-2022
https://store.mintel.com/report/the-green-bpc-consumer-china-2022

2)Women’s Facial Skincare – China – 2021
https://store.mintel.com/report/womens-facial-skincare-china-2021

3)Attitudes Towards Prestige BPC Products – China – 2022
https://store.mintel.com/report/china-attitudes-towards-prestige-bpc-products-market-report

4)Age Management Products – China – 2022
https://store.mintel.com/report/age-management-products-china-2022

消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート

株式会社ミンテル ジャパン(https://japan.mintel.com
ミンテルは、消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパートだ。マーケットインテリジェンスのリーディングカンパニーとして、世界と国内の市場に関する独自の視点を提供する消費者/市場/新商品/競合他社の分析を行い、市場の将来的な展望について必要な情報を多角的に提供している。1972年の会社設立以降、長年の蓄積に基づいた独自の視点で、クライアントのより迅速な経営決断を可能にする予測分析と専門家のレコメンデーションを提供。ミンテルの使命は、ビジネスと人々の成長をサポートすることである。

〒101-0054
東京都千代田区神田錦町2-2-1 KANDA SQUARE 11F
Tel: (03) 6228-6595
press@mintel.com

同社が提供するサービスの詳細については、こちら(japan.mintel.com)から。

 
月刊『国際商業』2023年04月号掲載