スキンケア製品の消費者にとって、購入した場所はブランド認知度を左右します。パンデミック時のオンライン販売の台頭は、スキンケア業界に長く影響を与えました。これによって、消費者がこれまで以上に多くの選択肢を利用できるようになり、ブランドロイヤリティや差別化が難しくなっているのです。そこで今回は、消費者のオンラインおよびオフラインでのショッピング体験を向上させるための三つの戦略について解説します。
オンラインとオフラインを連動させた体験の開発
店舗での購入が主流であることに変わりはありませんが、意思決定プロセスにおいてオンラインが果たす役割はますます大きくなり、進化を続けています。英国では、フェイシャルスキンケアユーザーの10人に3人が製品の効果を調べるために成分に関するオンラインリサーチを行ったことがあります。
スキンケアは、メイクアップやフレグランスなどの他の美容カテゴリーに比べてオンライン販売が容易であるにもかかわらず、スキンケアアイテムの消費者の多くは店頭での買い物を続けており、既存・新興問わずオンライン販売チャネルを活用することに加え、店頭でのショッピング体験を引き続き発展させることの重要性が浮き彫りになっています。
テクノロジーの進化や、カウンセリング、サンプリングを通して、消費者が新たな商品と巡り合う機会を店舗で提供することで、他と差別化され、魅力的なショッピング体験を提供するブランドやショップとして、ファンを獲得するうえで最も有利になるのです。
新商品開発とマーケティングを通じて、オンライン体験を考慮する
スキンケア製品をオンラインで購入する際、消費者は多すぎる選択肢に圧倒されがちです。そこで差別化を図ることは困難ではありますが、ブランディング、パッケージング、オンラインショッピングの体験はすべて、消費者が何を購入し、どこで買い物をするかに影響を与えるため、非常に重要な要素です。
例えば、商品の肌触りを体感できないことが、オンライン購入の障壁として残っています。 中国の女性スキンケアユーザーの10人に4人が製品を選ぶ際に最も重要な要素の一つとして、形状やテクスチャーを挙げています。
そこでブランドは、オンラインでテクスチャーを伝える新たな方法を模索しています。onTopのリニューアルオイルクリームのように、次世代の質感を開発して魅力をアピールしながら、DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)サイトを活用して、感性に訴える言葉で質感を伝えているブランドもあります。
出典:onTopの 小紅書
オイルクリームのような感触で肌を保湿し、セラミドやフィトステロールズ、一部の固形油脂など、通常液体オイルでは添加できない脂質も添加することが可能となりました
ブランドは、新しさにスポットライトを当てることで、消費者を引きつけることも必要です。サスティナビリティの要求とはやや相反するものの、消費者は新しい製品でワクワクさせてくれるブランドを求めているのです。
消費者は、ブランドの革新性によって引き付けられる傾向にあるため、新製品開発が購買行動に直接影響を与えると言えるでしょう。ビューティーパーソナルケアのオンラインショップの多くは、新製品やトレンド商品を紹介するコーナーを設けており、消費者は最新のフェイシャルスキンケア製品を簡単に見ることができます。 MECCAのスキンラボのように、店内に新製品を発見するためのスペースを設ける小売企業も増えていますが、こうした活動は通常、旗艦店でのみ行われ、アクセスは限られています。量販店には、リテール全体に展開できる小規模なキャンペーンを展開し、専用の棚を設けて新商品やトレンドのスキンケアにスポットライトを当てるという方法があります。
異なる販売チャネルの強みを生かす
スキンケアの消費者が特定の販売チャネルで買い物をする理由を認識し、オンラインとオフラインの体験がそれぞれ目的に合っていることを確認することが重要です。オンラインでの購入に対する主要な障壁を取り除くためには、継続的な投資とイノベーションが必要ですが、オンラインの活性化は、店舗での買い物の必要性や欲求を低下させる可能性があります。結果として、スキンケア製品のショッピングにおいては、オンラインでの体験の方が優れていると感じられることもあるでしょう。しかし、スキンケアを購入する際には、店舗での体験がオンラインと同じだと思ってもらえる機会もあります。
特に、消費者がブランドや製品を比較・検討する方法を求めるようになっているため、小売業者はテクノロジーを使って実店舗での情報へのアクセスを強化するといいでしょう。例えば、肌タイプやサブカテゴリー別にスキンケアをキュレーションすることで、消費者の買い物スタイルに合わせたり、エコやエシカルといった消費者意識の高まりに対応したりすることができます。
出典: Trinny London
Trinny Londonは、Skincare Diariesと題して、特定の肌タイプや悩みを持つ女性への製品の適合性を紹介しています。
オンラインレビューの信頼性と機能性を強化することは、スキンケア消費者にとって非常に役立ちます。ブランドと小売業者は、レビューの利便性を高めるためにさらに注力する余地があるでしょう。消費者は、購入の意思決定を検討する際にレビューに頼ることが多くなっています。レビューが偏ったものや、捏造でないことを確認する方法をますます求めるようになると考えられます。ブランドは、美容レビューの専門家や製品比較の専門家と協力することで、より多くのビジネスチャンスを探ることもできるでしょう。
Mintelの考察
ブランドは、各販売チャネルの強みを生かし、あらゆるタッチポイントで技術を活用することで、店舗とオンラインにおける体験を差別化・向上させるとともに、スキンケアの消費者のオンライン購入を阻む障壁を壊していくことが必要です。
消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート
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