日本における「ノーファンデメイク」のトレンドは1年も経たないうちに終わりを迎えようとしています。そして、これをきっかけに消費者と美容業界に少しずつ変化が訪れたのです。ミンテルでは、今後のイノベーションのために、この変化を分析してみました。

2020年、マスク着用が常態化したことで、日本の消費者はナチュラルメイクを取り入れるようになりました。しかしながら、ミンテルの新しい調査によると、日本の消費者のうち、化粧品やカバー力のある製品の使用を減らしていると答えた人はわずか13%だったのです。これは、日常的な外出や行動の制限、マスク着用によって化粧品の使用率が下がるという予想に反し、消費者が依然として化粧をしていることを示しています。

日本の消費者は、1年以上にわたりナチュラルなメイクを楽しんできました。しかし、今はもっとカラーコスメを取り入れたいという欲望が高まっており、日本のビューティートレンドの変化の速さを物語っています。

新型コロナウイルスの影響を大きく受けている日本の美容業界にとって、これは良い兆しです。一時は、多くの化粧品ブランドが新製品の発売を延期するなど、業界全体の動きが鈍くなっていました。しかし、消費者が再びカラーメイクを楽しむようになれば、今後の見通しは一段と明るくなるはずです。

ミンテルでは今後1年間、日本ではカラーメイクへの関心が増加すると予測しています。カラーマスカラやアイライナーを使い、目元に大胆なポップカラーを取り入れるなど、遊び心のあるメイクがトレンドとなるでしょう。

とはいえ、ノーファンデメイクが日本における美容の未来に与えてきた影響を再考することも必要だと考えています。ノーファンデメイクとは、色つきの日焼け止めやコンシーラー、プレストパウダーなどを使用するシンプルなメイクのことを指します。パンデミックの影響で消費者の優先順位が変わり、このような商品がより多く使われるようになりました。自分のことを見直す機会が増えた今、良質なスキンケアに投資などして、自信を取り戻そうと努力する消費者も増えたことでしょう。

肌にストレスを与えることなく使えるベースメイクアイテムの需要は、まだまだ続くと予想しています。マスクの影響で、ニキビやマスク荒れなど、予期せぬ肌トラブルに悩まされている人も少なくありません。そのため、軽めのテクスチャーの方が肌ストレスの軽減につながると感じる消費者もいるでしょう。

そのほか、スキンケアや肌の保護、トーンアップ効果などをうたっている、多機能タイプの製品へのニーズも高まっています。これは日焼け止めジャンルにおいて最も顕著と言えるでしょう。

ミンテルの調査によると、日本の消費者の41%が美容/スキンケアに紫外線への予防的アプローチ(SPFの使用)を取り入れています。ヒアルロン酸を配合して肌に潤いを与え、高純度のパールを配合して健康的な輝きを作るカネボウ化粧品の「アリィー ニュアンスチェンジUVジェル SPF50+ PA++++」などは、このような新しい消費者ニーズに応えるものです。

また、「エリクシール ルフレ バランシング おしろいミルクC」は、ファンデーションを使わずに自然に気になるところをカバーできる日中用のエイジングケアミルクとして紹介されており、毛穴やくすみ、肌の色ムラなどを隠します。

これらの製品は、トレンドの移り変わりが早い中でも人気を集めています。色つき日焼け止め以外にも、部分的なくすみカバーからフルカバーまで、重くなりすぎず潤いのある仕上がりになることから、コンシーラーをファンデーション代わりに使用する消費者も出てきています。

ノーファンデの日にコンシーラーを使用できるよう、日本の化粧品ブランドはコンシーラーのテクスチャーを常に進化させています。例えばSHIROの「タピオカコンシーラー」は、弾むような感触が特徴。うるおい豊かなテクスチャーが毛穴に入り込むことなく滑らかに伸び、乾燥や紫外線から肌を守ることを強みにしています。

ヘア&メイクアップアーティストの河北裕介氏がプロデュースした「&be ファンシーラー」も、クリームやジェルのようなテクスチャーで肌に負担をかけないコンシーラーで、着実に愛用者を増やしています。

さらに、ノーファンデメイクのトレンドがもたらした最も驚くべき現象があります。それは、男性もコンシーラーを購入し始めたことです。Zoomやテレビ会議に参加する機会が増えたことで、気になる部分を隠したいと思う男性が増えた模様で、メンズコスメがメイクにまで広がりを見せています。

日本人男性がカラーコスメを使う目的は、フェミニンな顔立ちに仕上げたいからではなく自分に自信を持つためです。男性用コンシーラーやネイルカラーなどの新商品開発が活発化していることからも、男性がさまざまな美容製品を試すようになったことが見受けられます。

ミンテルのGNPD(世界新商品情報データベース)によると、日本における男性用のネイルカラーに特化した新製品開発は、2018年の0%から2020年には36%増加。

ノーファンデメイクのトレンドは1年ほどで終わりを迎えていますが、そのトレンドによって日本の化粧品市場にさまざまな変化が生まれており、その影響は今後もしばらく続きそうです。

 

(ミンテル 長谷川 怜子)

消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート

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