多くの消費者にとって、心身の健康を保つことは、内面から輝きを放つようなホリスティックな美しさを持つことと同じです。美容と健康の融合は、加齢、脱毛、ホルモンバランスの乱れといった健康問題に対応できる商品を求める消費者にとって、大きな意味を持ちます。内側からの美容と肌の健康サポートは、食べ物や飲み物、サプリメントに肌の健康や美容に関する効果をより多くもたらすことで、従来のメイクアップや美容ルーティンに代わるものとなるでしょう。 Mintel世界新製品データベース(GPD)によると、2017年1月から21年12月の間に、機能性*をうたう世界の食品、飲料、サプリメントの発売が78%増加しました。特に、アジア太平洋地域での動きが顕著で、摂る美容の革新につながるだろう業界の活発な動きを示しています。

ヘルシーエイジングのための提案

ヘルシーエイジングへのニーズは、シニアから中高年、ミレニアル世代と、幅広い層へと広がっています。その背景には、予防医療やセルフケア、アクティブなライフスタイルの実践等に対する意欲の高まりがあります。Mintelの調査によると、オーストラリアとニュージーランドの消費者の約10人に7人が、「健康的な食生活は、外から使用する製品よりも肌・髪に重要な役割を果たす」という見解を持っていることが明らかになりました。

コラーゲンは、顔色を良くし、若々しさをサポートする効果があるとされ、トレンドの美容健康成分として注目されています。 コラーゲンは依然として市場のトレンドですが、人気の美容成分としては他にもいくつかのものが挙げられます。例えばヒアルロン酸は、組織細胞の中に水分を閉じ込め、目の潤いを保ち、関節を潤滑にし、肌の潤いと若さを保つことが知られており、関心を集めています。ヒアルロン酸は、コラーゲンなどの美容成分と組み合わせることで、さらに消費者に認知される可能性を秘めていると言えます。

このほか、若々しい肌や関節の健康を保つプロテオグリカンや、肌の水分バランスを健康に保つセラミドも注目の成分です。セラミドはもともと皮膚細胞に存在しているものですが、加齢とともに減少するため、歳をとるごとに皮膚のバリア機能は損なわれやすくなります。そこで、「フィトセラミド(植物性セラミド)のサプリメントを摂取することで、体内のセラミド濃度を高めることができる」と研究者たちは提唱しています。

髪の健康のために栄養を補給する

抜け毛には、ストレス、健康問題(糖尿病など)、遺伝、年齢、食生活における不適切な栄養摂取(特定の栄養素の不足など)など、さまざまな原因が考えられます。Mintelのデータによると、インドの消費者の53%が、抜け毛を防ぎ、健康で丈夫な髪をサポートする美容サプリメント製品に関心を持ち、中国の消費者の64%が、ヘアケア製品の栄養補給の訴求に関心を示していることがわかりました。

髪の健康に対する消費者の強い関心を鑑みると、抜け毛対策用の健康食品がこのカテゴリーで求められることになるでしょう。ブランドは、抜け毛用の食品、飲料、サプリメントが、直接気になる部分に塗布する治療薬に次ぐ自然なステップであることをアピールしたり、髪だけでなくさまざまな部分への機能性が証明された栄養素や成分を模索することで、身体と髪の健康の両方をサポートすることができます。

女性のホルモンサイクルに対応した飲む美容法

女性ホルモンの変動は、身体的、精神的・心理的な健康に大きな影響を及ぼします。月経前症候群(PMS)や生理痛など、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされるさまざまな症状に対し、栄養面でサポートする健康食品・美容製品が、今後ますます注目されるでしょう。Mintelの「Make it Mine」によると、ウェルビーイングを考える上で、画一的なアプローチだけではもはや十分でないため、パーソナライズされた製品の提供が期待されるようになるといいます。

米国では、サプリメントユーザーの31%が、自分と同じような人のための特別な処方が重要であると考えています。アジア太平洋地域の消費者は、年齢に関係なく健康全般と美容の関連性を認識しており、食品、飲料、サプリメント分野における摂る美容のイノベーションは、成長が期待される状況であり、今年注目すべき主要トレンドの一つとなっています。

*美容効果、皮膚や爪・髪、肌の不調、紫外線防止など

 

 

(ミンテル シニアビューティ&パーソナルケアアナリスト 長谷川怜子)

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月刊『国際商業』2022年08月号掲載