美容業界は、肌の色、ジェンダー、年齢などの多様性に適応するべく、長い道のりを歩んできました。しかしながら、障がいを持つ消費者への製品づくりにはいまだに課題が残っています。
いまや消費者の間でもこうしたニーズに対する認識が広まっており、米国の成人の 半数以上 が美容業界はさらに多様性を持つべきだと回答し、イギリスの成人の 10人に4人 が美容ブランドは障がい者のことを考えていないと感じると回答しており、ブランドはこの溝を埋める必要性があることを示唆しています。
今回、Mintelは、六つの多様性豊かで革新に満ちたデザインのビューティー・パーソナルケア商品をまとめました。
- Olayイージーオープンリッド
Olayの保湿製品では、開けやすさを重視したイージーオープンリッドが新しく採用されました。左右に羽(ウィング)のようにのびたウィングキャップで握りやすく、点字を施したこの蓋は肢体不自由、慢性疾患、視覚障害など、さまざまな障がいを持つ消費者と共同で開発されたものです。Olayは、この蓋の特許を取得しないことを表明しており、競合他社にもこのデザインを解放して美容業界における課題の改善を図る動きを推進しています。
- Guide Beauty 人間工学に基づいたデザインのアイライナー
Guide Beautyは、メイクアップアーティストであり、美容指導も行ってきたテリー・ブライアント氏が、自らがパーキンソン病と診断されたことを機に、特に正確さが問われるアイメイクをさまざまな障がいレベルの人が簡単に行えるようにすることを目的として立ち上げられました。
人間工学に基づいてデザインされたアイブロウジェル、マスカラ、ジェルアイライナー、アイライナーは人差し指と中指でキャップを握ることでコントロールしやすくなり、残りの指を自由に使えるので、顔に当てて不快感なく、正確に操作することができるのが特徴です。
- Kohl Kreatives フレックスコレクション
Kohl Kreativesから発売されたフレックスコレクションはスタイリッシュな自立型の ブラシです。転がらないキューブ状の握りやすいハンドル、曲げやすいヘッドを採用し、運動障がいを持つ方や手先を動かすことが苦手な人でも、楽に正確なメイクアップができるような設計です。
このブラシは、デュピュイトラン拘縮、多発性硬化症やパーキンソン病など、さまざまな症状を持つ人々がメイクアップを楽しめるようにデザインされています。また、視覚に障がいのある消費者のためには、識別のためのサポートや音声ガイドをそろえています。
- Degreeによるデオドラント
Degreeによる多様性を尊重したデオドラントは視覚障がい者や上肢運動障がい者のために設計されています。片手で使えるようにフック状の形状になっており、マグネット式なので蓋の開閉もしやすくなっています。説明書きは点字で施されており、ロールオン式アプリケーターの表面積が大きい点も特徴です。
多くの人にとって毎日の必需品であるデオドラントですが、その塗布は障がいのある人々にとって簡単な作業ではありません。人間工学的に設計された基礎化粧品の製品開発が、私たちの多くが当たり前のように使っているカテゴリーでも必要とされています。
- Grace Beautyから、つけるだけで使いやすくなるビューティーアイテム
Grace Beautyは関節炎などの症状を持ちながらもメイクアップを楽しみたいという気持ちに応えた、ハンディキャップのある消費者にも配慮したブランドです。スリーマスカラウォンドアドオンは、主に3つのハンディキャップを抱える人や、手先の不安定な人のためにデザインされています。リンググリップ、セーフグリップ、スクエアグリップをお気に入りのマスカラに取り付けるだけで、よりコントロール性と安全性を高めるゴム製のアクセサリーです。
- SHISEIDO ヴィジョナリー ジェルリップスティック
トリプルゲルテクノロジーを採用したヴィジョナリーリップスティックは、塗布時に独特の冷たさを感じることができるため、視覚障がい者にも使いやすい商品です。
(ミンテル シニアビューティ&パーソナルケアアナリスト 長谷川怜子)
消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート
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月刊『国際商業』2022年04月号掲載