謹んで新年のお慶びを申し上げます。

旧年中は皆様より格別なるご支援とご厚誼を賜り心より御礼申し上げます。

2023年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

「共生社会」を実現するための転換期

昨年は、新型コロナウィルスの流行に伴う制約下での生活も3年目となり、またロシアによるウクライナ侵攻など地政学上のリスクが顕在化したことなどもあって、環境問題や社会課題などについて“自分ごと”として考える方が増えました。

また、「『モノからコトへ』の転換」と言われるように、単なる消費で満足するのではなく、「自分の行いについて、他者から承認を得る」ことに“喜び”や“安心”を感じる価値構造へと変化しています。

このように「他者を理解する力を養い、利他の心で周囲に接し、他者の幸せが自分の幸せと感じられる」といった、当社が実現を目指す「共生社会」について、多くの人が考える「時代の転換点」を迎えたと感じています。

このような時代を勝ち抜くには、「製品価値起点」「顧客価値起点」「社会価値起点」という三つの起点において、消費者をはじめとする当社のステークホルダーと協創して、変革に取り組むことが大切だと思います。

「Kyo-sei Life Vision 2030」を全ての事業の中核にすえて着実な実行を

当社では、このような社会の大きな変化を予見し、中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030~For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World~」を定め、合わせて第11次中期経営計画を立案し、事業活動を通じて着実に「共生社会」の実現に寄与するべく、さまざまな取り組みを進めてまいりました。

いくつか具体的な取り組みをご紹介したいと思います。まず、2016年より進めております「使用済紙おむつのリサイクル事業」がございます。本事業は鹿児島県志布志市ならびに大崎町と実証実験を進めており、すでに未使用品パルプと同品質の衛生的で安全なパルプへとリサイクルする技術を確立しました。

昨年5月には、リサイクルパルプを使用した大人用紙おむつを製造し、鹿児島県内の介護施設様でご使用いただきました。ご使用いただいた介護施設さまからは、「品質は通常品と比較してまったく遜色がない」との評価をいただき、加えて「リサイクルパルプを用いた紙おむつの使用を通じて、環境問題の解決に手軽に参加できる」と、本取り組みの意義に共感をいただきました。このような進捗を踏まえ、本年は商業運転に移行する計画です。

また、昨年5月より取り組みを進めております「商品ごとのGHG(温室効果ガス)排出量の見える化」につきましては、世界的な算定基準である「GHGプロトコル」に準拠したシステム構築が完了し、本年よりテストランへと移る予定です。本件においては、より精度・鮮度の高いGHG排出量を算定すべく、お取引のある資材サプライヤーさまにご協力をいただき、資材ごとの一次データを活用した商品別GHG排出量の算定に取り組んでいます。本年中にシステムの各種チューニングを完了させ、来年・2024年には一部の商品で消費者をはじめとするステークホルダーの皆さまに情報発信することを目指しております。

このようなESGに関する取り組みにつきましては、2020年より役員報酬の評価指標に組み込んでおりましたが、本年からは一般社員にも採用し、環境問題や社会課題の解決に、全社員一丸となって取り組むことで、新たな価値創造を推進します。

「先手必勝、後手でも必勝」

2030年までに「世界一」に成長することを目指す当社ですが、「世界一」となるには「価値の創造と浸透」が欠かせません。しかしながら、「価値の創造と浸透」は一朝一夕に実現できるものではありません。なぜならば、消費者が求める価値構造の変化は激しく、加えて、日本において顕著な高齢化などによる“先行きに対する不安”といった心理的要素がもたらす節約志向などが、当社が目指す「世界一」という目標に大きく影響するからです。

このような変化はある意味で「予測可能な未来」です。2023年はこの「予測可能な未来」に対して「先見力」を発揮するという「先手必勝」で臨みます。また、たとえ後手に回ることがあっても「対応力」によって巻き返し、「後手でも必勝」となる一年にしたいと思います。

このように「先見力」と「対応力」の両輪で「全てに先手で取り組む」姿勢を貫くという強い意志を込めて、本年・2023年の決意を表す一文字には【先】(せん)を掲げることとしました。

皆さまにおかれましては、本年も旧に倍するご指導ご鞭撻を賜りますようどうぞ宜しくお願い申し上げます。

高原豪久(ユニ・チャーム代表取締役社長執行役員)