明けましておめでとうございます。謹んで新年のご挨拶を申し上げます。また、旧年中は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。

新型コロナウイルスによるパンデミックはすでに3 年に及んでいます。私は、パンデミックの初期、社内向けに「止まない雨はない」と発信したことを覚えています。さて雨は止んだでしょうか。世界は漸くこの災厄の出口に差し掛かっているのかもしれません。しかし、出口の先はパンデミック以前の世界と同じではなさそうです。With コロナの新しい景色が私たちの目の前に広がっていくのでしょう。地球温暖化の影響が急激な気候変動として実感されるようになり、ウクライナに端を発する地政学リスクも身近に感じられるようになりました。これらは短期に解決できるものではなく、今後はコロナだけではなく様々なことにWith〇〇として付き合っていくしかなさそうです。人々は皆、以前にはない「大きく漠とした不安」を抱えています。この不安をやわらげるため何ができるのか、今後の私たちにはこのような視点での貢献が求められると考えています。

生活の中での「漠たる不安」の解消を考えるとき、改めて生活習慣の重要性を感じます。朝起きて「歯をみがき」、「顔を洗って」、「洗濯をする」。こうしたことひとつひとつは健康や清潔な暮らしづくりに大きな効果を持つのはもちろんのこと、これら何気ない行為の繰り返しが暮らしにリズムと潤いを与えて心を明るくするのに大きなチカラを持っています。私たちライオンは「より良い習慣づくりで人々の毎日に貢献する」ことを自らのパーパスとし、昨年、この「より良い習慣」を「Positive Habits」と定義しました。習慣のなかでも「必要だとわかっていても気が進まないこと」を「楽しくすすんでできること=Positive Habits」に変えていくことが私たちの「より良い習慣づくり」であると定め、今年度以降の商品やサービスの開発に取り組んでいこうとしています。その第一弾として本年4月に「ソフラン Airis」を発売します。新たな香り技術と触感で洗濯の時間をより前向きで心地よいものに変えようという提案です。このPositive Habits を一日の中で少しでも増やしていくことが、低い雲のように世界を覆う不安を払うのに役立つと考えています。今年も精力的に活動し、多くの習慣提案を続けていきたいと思います。

もう一つの視点はサステナビリティです。人々は「50 年に一度」といった激しい気象現象に度々見舞われる中、将来への大きな不安を抱えています。地球温暖化の抑制に一刻も早く道筋をつけることは不安解消に不可欠です。世界中の政府、団体、企業が精力的にこの問題に取り組んでいますが、私たちの業界が果たすべき役割も大きいと考えます。日本の場合、CO2 の総排出量のうち実に15%程度が家庭由来と言われており、その多くが上水、下水など日常の家事による水の使用に伴って発生しています。業界全体として生産や物流など企業活動に関わるCO2 排出量を削減していくことは勿論のこと、私たちの商品が使われる場面でのCO2 排出量の削減が大変重要だと言えます。私たちはここでも生活習慣に働きかけることが有効であると考えています。「節水習慣」や「詰め替え習慣」など人々の生活習慣を環境に良いものに変えていくことは、私たちにこそできるCO2 削減貢献ではないでしょうか。メーカー、流通が一体となってこうした取り組みを進めていけば大きな効果が得られると考えています。

また、こうして得られた環境に良い習慣を海外向けに発信・提案していくことも重要です。日本はCO2 削減で遅れをとっているような印象を持たれていますが、少なくとも人々のライフスタイルに関しては多くの点で世界的に見てもすでに環境にやさしいものになっています。洗濯を温水を使わず水道水のまま行うのも欧米にはない習慣ですし、乾燥機の使用頻度も少なく、多くは外干し、室内干しです。その際に使われる商品は、こうしたエコな使用条件に合わせた機能進化を遂げています。前述したようにもちろん今後もエコな習慣づくりを発展させる必要がありますが、これまでの習慣も含めて広く世界に紹介し、効果を拡大させていく取り組みも重要でしょう。当社も政府や関連企業と連携し、あらゆる機会をとらえて日本流のCO2 削減習慣を世界にアピールしていきたいと考えています。

今年も昨年同様、不透明な事業環境が続きますが、このような取り組みを一層加速していく所存です。旧年にも増して、一層のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、新しい年が皆さまにとりまして、ご多幸と繁栄の年となりますことをお祈り申し上げます。

掬川正純(ライオン代表取締役  社長執行役員)