コロナ禍で大きな痛手を受けた英国経済の復興は、ロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけた世界的なエネルギー危機によって大幅に減速してしまった。英国の電力自給率は75%とはいえ、昨年は年間通して風の弱い日が続き、風力による発電量が前年より15%近くも落ち込んでいた。しかし規制緩和による経済活動再開によって、エネルギー需要自体は大幅に伸びている。ガス備蓄量も減っていたところに、フランスからの電力を受け取る送電施設が火災で機能停止した。さらに例年より寒い冬、というトリプルパンチをくらい、英国のエネルギー価格は高騰したのだった。エネルギー小売業者32社がその原価高騰を消費者に転嫁できずに経営破綻したほか、製造から輸送まで社会のすみずみにこのエネルギー危機が及び、物価高となった。

筆者の家庭では今年の1月くらいまで、月々2万円程度の光熱費を払っていた。それが春から3カ月ごとに倍額に上がって暗たんとしていたところに、ジョンソン前首相の後を次いで英国で三人目の女性首相となるトラス氏が登場した。

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