伊勢半本店は、東京・南青山の紅ミュージアムで、5年ぶりの企画展「ちぃさい、ちっこい、ちっちゃ!」を10月18日から12月11日まで開催している。同展では、江戸時代から昭和時代にかけて製作された、ままごと道具やミニチュア台所道具類を展示。子どもと大人、それぞれの用途と嗜好を探る。同時に、小さなものが写し出す、時代と興趣が感じられる展示となっている。

日本には、モノや世界観を縮小化することに親しんできた歴史がある。縮小化の背景には、子どもの手遊びとして求められた実用性や、大人の鑑賞のまなざしに呼応して、より小さなものに傾倒していった嗜好性などがみられる。

企画展の第1章では、「小さくも実用の道具たち~“まね”ごとで遊ぶ、学ぶ」と題して、子どもの楽しみである、ままごと遊びの道具としてのミニチュアを展示している。ままごと道具は、子どもが日常風景をまねて遊びながら学ぶツール、家庭教育の教材としての意味を持つ玩具。ままごとに用いられた調理器具や食器、茶器などは、小さいといえども、手に持って遊ぶことができるサイズになっている。水回りや炊事設備など、当時の生活空間まで巧みに実写した再現性も見どころとなっている。


勝手道具一式 明治時代末期 日本玩具博物館蔵(撮影:外山亮一/©Ryoichi Toyama

第2章では、「小ささを賞玩されたものたち~目で遊ぶ、愛で愉しむ」と題して、大人の愉しみである、“愛でる極小の日用品”を展示。大人が求めたミニチュアは、遊ぶことを目的とせず、一寸に満たないような規模の中で細部の再現性にこだわり、見ること・愛でることに重きを置いた工芸玩具といえる。江戸時代にミニチュア玩具の名店として知られた、上野池之端の七澤屋や浅草の武蔵屋が手掛けた品が展示され、何気ない日用品の縮小化に反映されたこだわりが垣間見える。


ギヤマン-切子ガラス器類- 江戸時代後期 川内コレクション

また、コラムのコーナーでは、ミニチュアのままごと道具や、手のひらサイズの鏡台を時代の変遷とともに展示。ミニチュアの歴史資料としての存在価値を伝えている。


雛道具の鏡台と付属の化粧道具類 明治時代末期 日本玩具博物館蔵

紅ミュージアムは、江戸時代から続く最後の紅屋である伊勢半本店が運営する資料館。1825年の創業時から現在まで受け継いできた紅づくりの技と、化粧の歴史・文化を数々の資料とともに公開している。「日本の伝統文化・伝統工芸の一端を担いたいという思いから、日本の伝統工芸を主眼に企画しています。紅文化だけでなく、その周辺の文化が後世に残るための一助になればと思っています」(伊勢半)。紅文化とともに、日本の化粧文化や伝統工芸を学び、その美しさを体感できるミュージアムとなっている。