日本メナード化粧品は、トウチュウとの共同研究により、光を光源方向へ反射することで対象物を明るく輝いて見せる、「再帰性反射」という光学特性を備えた新規の球状粒子を開発した(図1)。今後日本メナード化粧品は、同球状粒子を応用することで、既存の化粧品原料とは異なる光のコントロールによってメイクアップ効果の幅を広げ、新しい美の価値を提案できるものと期待する。なお、同研究の成果は2025年5月21~22日にかけて宮城県仙台市で開催された粉体工学会2025年度春期研究発表会にて発表した。

図1
従来のメイクアップ化粧品は、配合される粉体の光学特性を巧みに利用し、肌表面での光の反射をコントロールすることでメイクアップ効果を実現している。その基本は「鏡面反射」と「拡散反射」という二つの光学現象だ(図2)。鏡面反射は、光を物体の平滑な表面で一方向へ強く反射する現象で、マイカやパール顔料などの板状粉体により、肌にツヤや光沢、そして立体感を生み出す。拡散反射は、光を物体の表面や内部で様々な方向に散乱・反射する現象で、多孔質性シリカのような球状粒子により、テカリを抑えたマットな仕上がりや、毛穴や小ジワなどをぼかして見せるソフトフォーカス効果を生み出す。

図2:鏡面反射と拡散反射
これに対して日本メナード化粧品では、新たな光コントロール技術として、これまで化粧品分野ではあまり活用されてこなかった「再帰性反射」に着目した。再帰性反射とは、光がどの方向から入射しても光源の方向へ反射するという特殊な光の反射現象で(図3)、光源側から対象物を見た際に、対象物が非常に明るく輝いて見えるという特徴がある。視認性が向上するため、特に夜間や暗い場所での安全確保に適しており、道路標識や安全ベストの反射帯などに応用されている。同社はこのユニークな特性を化粧品に応用できれば、今までにないメイクアップ効果を生み出せるのではないかと考え研究を進めてきた。

図3:再帰性反射
今回開発した再帰性反射特性を持つ新規の球状粒子を用いて、光の反射特性を確認した。開発した球状粒子(以下、開発品)の再帰性反射特性を、化粧品原料として一般的に用いられるホウケイ酸ガラスの球状粒子(以下、既存品)と比較した。
■実験方法
再帰性反射特性の評価は、国際照明委員会の定める方法(CIE54.2:2001)に準拠して行い、再帰性反射係数R’(物体に光が当たった時、その光が光源に向かって再び反射される性質を示す数値)を算出した(図4)。

図4:実験方法
■結果
開発品と既存品のR’値を比較したとき、開発品は既存品の2.6倍の再帰性反射特性を有することを確認した(図5)。

図5:再帰性反射特性
つまり、既存品と同等の鏡面反射特性を備えつつ、既存品にはない再帰性反射特性をもつことが確認されたことになる(図6)。

図6