戦略的値上げの断行。花王の長谷部佳宏社長が示した値上げの方針は、ベビー用紙おむつに始まる。4月1日から「メリーズ さらさらエアスルー」の新生児用、Sサイズ、Mサイズ、「メリーズパンツ さらさらエアスルー」のSサイズ、Mサイズ、Lサイズ、ビッグサイズ、ビッグより大きいサイズの8品について、出荷価格を約10%引き上げた。ベビー用紙おむつの次は、ファブリックケアの価格に手をつけるだろう。花王は着々と戦略的値上げを進める構えだ。

花王が値上げにこだわるのは、原材料価格の高騰に強い危機感があるからだ。例えば、パームオイルの原産地は東南アジアが多い。今後の経済成長に伴い、人件費は右肩上がりに上昇。それは価格に転嫁されるから、メーカーのコスト増は続くことになる。しかも、2022年は円安が急速に進んでいる。3月28日には一時1ドル125円台に突入。日本の日銀に当たる米国FRB(連邦準備理事会)はインフレ抑止策として継続的な利上げを示唆。日銀は金利抑制路線であることから、金利差の拡大によって円安はさらに拍車がかかる。花王とライオンは、22年12月期の予想為替レートを1ドル110円に設定。すでに大幅な乖離が生じており、調達のコスト増は避けられない状況だ。日用品メーカーは研究開発に力を入れ、商品の高付加価値化による実質値上げに取り組んできた。だが、それだけでは外部環境の変化による原料高に対応できないのである。

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