コロナ禍によるロックダウン時には、学校は休校し仕事は自宅勤務になり外出が規制された。英国ではこの時、手洗いだけは繰り返されたが多くの家庭において歯を磨く、入浴、髪を洗うといったパーソナルケアの頻度が下がった。外出しないのなら体は汚れない、学校や職場などで他人と同席する必要がないのであれば毎日の入浴や歯磨きは必要ないと考えた人が多かったらしい。業界団体CTPA(コスメティックトイレタリー香水協会)によるリテール27社へのヒアリングでは、昨年5~6月の段階でデオドラントが40%、シャンプー、整髪料や練りハミガキなどの売り上げは30%ほど落ちこんだ。

統計によれば、18歳以下に対する歯科治療はコロナ前には年間1200万件だったが、これがコロナ禍の1年で480万件に減少し、歯科医達は特に子どもの歯を心配した。パブリックヘルスイングランド(=PHE、日本の保健局のような機関)がロックダウン下での未成年の口腔衛生を調査した結果、親はお菓子やソフトドリンクを日中ひんぱんに子どもに与えており、しかも歯磨きを嫌がる場合は強制しないという回答が多数見られた。在宅勤務で仕事をこなしながら、学校に行けず家のなかで退屈している子どもの世話に疲れ、その口腔衛生に気が回らない親の姿が浮かんできた。P&G傘下の電動歯ブラシやハミガキのブランド「オーラルB」が行った調査では、パンデミック以来、未成年の三人に一人が歯になんらかの問題を抱えているが治療は受けていないという。状況を憂慮したPHEと英国歯科医師会は、歯磨きの大切さを改めて訴えるキャンペーンを行ったが、あまり成果が上がらなかった。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

ログイン