化粧品専門店「おしろいや きき」(滋賀県草津市)は、顧客とメーカーに真摯に向き合う企業だ。取引先はアルビオンのみ。経営を舵取りする杉本正雄社長、店頭活動を切り盛りする夫人の杉本世都子店長は、乳液から始まるアルビオンの4ステップの美容理論に惚れ込み、その価値を嘘偽りなく顧客に伝え続ける道を選んだ。エステを美容活動の柱にすることで、美しい肌を目指す顧客の気持ちに寄り添う。メーカーを1社に絞り込んだ覚悟は、顧客の納得感を高める効果を生んでいる。この経営哲学が生んだ強固な顧客基盤が15年以上も続いた「億ショップ」の礎になったのは間違いない。2021年4月にアルビオンで働いていた子息・杉本弦輝取締役が家業に復帰。後継者を交え、コロナ後を見据えた創意工夫が始まろうとしている。

左から「おしろいや きき」の岡田静佳さん、東野理恵子さん、杉本正雄社長、杉本弦輝取締役。
アルビオン美容部員の八木杏奈さん、山本千愛さん

強い顧客基盤を生んだエステ中心の店頭活動

「おしろいや きき」のアルビオンに対する情熱が一層大きくなったのは、小林章一社長の存在が強く影響している。06年に社長に就くと、創業以来追求する「一品一品に想いと魂を込めた商品づくり」と「お客様の素肌と心に触れる接客」のさらなる強化に動いた。例えば、07年の白金教育センター(東京都港区)の竣工、10年の白神研究所(秋田県藤里町)の開所、13年の東日本橋研究所(東京都中央区)の開所、14年の東京農業大学と共同でスリランカ伝統植物研究所の開所、白神研究所八千代薬草園(千葉県八千代市)の開設などが、それだ。杉本社長は「多種多様の美容理論を紹介するのは、お客様を困惑させるのではないか。信頼関係を育めないのではないか。そう考えたから、素材開発、商品開発などに現れているアルビオンさんの本物志向に全幅の信頼を置き、08年からオンリー店に切り替えたんです」と説明する。

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