10月9日決算発表においてウエルシアHDの池野隆光会長は次のように発言した。
「既存のドラッグストアが持つマーケットを1cm、2cm広げたい。その具体的事例はこれまで扱っていない高級化粧品。もう一つは海外ブランドを扱っていきたい」とした。
詳しい説明は避けたが、池野会長が言う扱っていない高級化粧品は、化粧品専門店(MASAYA)の買収だ。これはまさに化粧品メーカーにとって、化粧品専門店流通に大きな風穴を開けられたことを意味すると言っていいだろう。岡山市に本社を置き、全国に31店を展開する有力化粧品専門店、まさやのウエルシアへの身売りは、百貨店、専門店のみで販売してきた、ハイプレステージ、プレステ―ジブランドの販売を、今後ドラッグストアに委ねる第一歩となるからだ。
周知のようにセルフ販売が主体のドラッグストアで販売する化粧品は、値段がこなれた商品群だ。百貨店、専門ブランドの一格下、プレステージブランドを扱うことはなかった。ウエルシアの「B.B.ON(ビビオン)」、マツモトキヨシHDの「Beauty U」の新業態は、プレステージブランドの門戸を開けるための試み。だが、それはいずれもうまくいっていない。
実はまさやの身売り話は当初、イオンとの間で行われていた。ウエルシアがまさやの運営に当たることが決まったのは、その後のこと。推測すれば、ドラッグストアがプレステージブランドを扱う絶好のチャンスとみたのではないか。
正式な発表は12月1日と見られる。まず、まさや化粧品専門店31店の運営母体がウエルシアに代わるだけだが、果たして今後それだけですむのか。後継者難、売り上げ不振など、化粧品専門店の疲弊は加速度的に進んでいる。まさやの身売りはそれを証明し、化粧品専門店流通の崩壊を早めようとしている。