経済産業省と日本化粧品工業連合会は4月26日、日本の化粧品産業のさらなる競争力強化と継続的な発展を目指すため、産学官で構成する「化粧品産業ビジョン検討会」(座長:国立大学法人一橋大学CFO教育センター長・伊藤邦雄氏)を立ち上げ、産学官で初となる化粧品産業の将来ビジョンを策定したことを明らかにした。

化粧品産業ビジョン検討会での議論を踏まえ、新たに「日本の先端技術と文化に基づいたJapan Beautyを世界に発信し、人々の幸せ(well-being)と世界のサステナビリティに貢献する産業へ」を化粧品産業のビジョンとして掲げ、目指すべき方向性および具体的取り組みとして、①新規需要を取り込んだビジネス戦略への転換②流行に振り回されない絶対的「日本」ブランドの確立③デジタル技術の活用を前提としたマーケティング戦略への転換④産学官によるビジネス環境の整備⑤更なる研究開発への取組⑥多様な人材の活用⑦SDGsへの積極的な貢献――の七つ取り組みを整理した。

世界の化粧品市場規模は約4263億USドル(2019年、約46.5兆円)、日本の化粧品市場は約350億USドル(同年、約3.8兆円)であり、米国(同年、約777億USドル〈約 8.5 兆円〉)、中国(同年、約572億USドル〈約6.2 兆円〉)に次いで世界第 3 位の化粧品大国である。日本製の化粧品は、高機能・高品質、安心・安全が海外でも高く評価され、外国人観光客によるインバウンド需要が増大し、出荷額は19年に1.7兆円を超え、過去最高を記録した。

しかし、足元では、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行により、外国人観光客によるインバウンド需要は瞬く間に消失、外出自粛により国内需要も減少し、日本の化粧品メーカーの売り上げは大きく低迷。また、中長期的には、欧州での化粧品に対する環境規制の厳格化や、持続可能な開発目標(SDGs)に対する消費者意識の高まりなどを踏まえた対応も求められる。さらに、韓国・中国の化粧品メーカーの台頭により、特にアジア市場におけるグローバルな競争は激化しつつある。

このような現状を踏まえ、日本の化粧品産業のさらなる競争力強化と継続的な発展を目指すため、産学官で構成する「化粧品産業ビジョン検討会」を立ち上げ、短期(10 年後)および中長期(30年後)を視野に、日本の化粧品産業が直面する課題を明確にしつつ、産学官が共通して目指すべき化粧品産業の将来像を示しながら、日本の化粧品産業における今後の具体的取組等について議論を重ね、その結果を「化粧品産業ビジョン」として初めて取りまとめるに至った。

なお、「化粧品産業ビジョン」は、産学官で策定した初めてのビジョンという意義もあるが、もう一つ大きな意義として、今回のビジョンの策定を通じて、日本の化粧品産業の関係者たちが今後の業界の将来について、率直かつ真剣な議論を交わすことができたというプロセスそのものが挙げられる。経産省と粧工連は、「化粧品産業ビジョン」を日本の化粧品産業に関係する多くの人々に示し、関係各位の今後の戦略や取り組みなどに生かしてもらいたいとの考えを示している。また今後、同ビジョンは、日本の化粧品産業を取り巻く状況変化等を踏まえながら、必要に応じてアップデートを図っていく。