ライオンは、子どものオーラルケアの格差是正を目的に、認定 NPO 法人フローレンス、NPO 法人全国こども食堂支援センター・ むすびえと協働して「インクルーシブ・オーラケア」を展開していく協定を3月8日に締結。同日に、「インクルーシブ・オーラルケア」に関する説明会として、オンライン発表会を実施した。
日本は先進国というイメージがあるものの、子どもの7人に1人が相対的貧困状態にある。特に、一人親世帯の貧困率はOECD諸国の中でワースト1位だ。さらに、経済的困窮家庭で育った子どもたちは、そうでない子どもたちと比べ、他者から褒められること、親以外の大人とのコミュニケーションをとることや、歯みがきなどのライフスキルの獲得体験が不足しており、自己肯定感が著しく低いことが特徴と言われている。
そこでライオンは、こうした背景から生まれるオーラルケアの格差を埋めていくと同時に、自己肯定感が不足しがちな子どもに少しでも役立ちたいという思いで「インクルーシブ・オーラルケア」施策を立ち上げた。
その具体的なアクションの中で重要となるのが、今回協定を締結したフローレンスと、むすびえだ。
フローレンスは、こども宅食事業(生活の厳しい子どもの家に、定期的に食品などを届け支援する活動)を通じて、支援が必要な世帯につながるネットワークがある。こども食堂の全小学校校区での展開を推進・支援しているむすびえは、こども食堂を通じて直にそうした子どもと接する機会を持っている。
ライオンはこれら二者の強みを生かし、まずは歯みがきをテーマにしたダンスやゲームなどを開発し、子ども食堂などを通じて直接子どもに届ける考えだ。発表会において、ライオンの掬川正純社長は「大人と一緒に楽しみながら、正しいオーラルケアの習慣が身につくようなコンテンツにしていきたい」とコメントし、開発中のダンス映像を公開した。
フローレンスの駒崎弘樹代表は「支援を必要としているが、さまざまな障壁で支援を受けられない世帯も多く、私たちはこうした親子の“つらい”を見つけ、必要な支援につなげていく活動をしています。こうした世帯では、“みがき方が分からない”、“かかりつけの歯科医に聞きづらい”、“歯科検診の情報が理解できない”、”歯ブラシを頻繁に変えられない”など、オーラルケアに関する課題も多い。ライオンさんとともに、『食べる』を支える口の健康を支えていきたいと思っています」とコメント。
むすびえの湯浅誠理事長は「昨年末に鳥取のこども食堂を視察に行ったとき、小学生の勉強を大学生くらいの女性が見守っていた。その小学生の親は『家ではこんな集中力をみせたことはない』と驚いていて、人に見守られることがその子の頑張る気持ちに火を付けたのだろうと感じる光景でした。歯みがきも、習慣化がかなり大きな課題だろうと考えています。見守ってくれる人、側にいてくれる人がいるという環境が、歯みがきを習慣化するためにも大きな役割を果たすのではないかと期待しています」とコメントした。
また、掬川社長は、今回の新たな挑戦について、「フローレンスさんや、むすびえさんから直にお話を聞くことで、私どもも腰を据えてしっかりやらなくてはいけないと感じました。現場に行かなくては分からないこともあると思うので、私自身も足を運びたいと思う。また、この取り組みについて社員と座談会をしたとき、自主的に『従業員も参加できますか』という声が上がるほどだったので、ぜひ社員たちにも参加してもらい、意義のある活動にしていきたいと考えています」とコメント。長期的な取り組みであることを強調するとともに、強い意思を持って臨んでいることがうかがえた。