春の気配を感じるようになった。朝晩の冷え込みは緩み、日中の衣服は薄くなった。遠くに見える富士山は霞むことが多く、妻のくしゃみも急に増えた。彼女の肌感覚では今年の飛散量は多いという。コロナ禍でのくしゃみは肩身が狭く、花粉症の人々には受難の年になるかもしれない。コロナ禍で露呈したのは、日本人の変化対応力が低いことである。他人を見る目も、仕事の仕組みも変化を恐れがちだ。世界中の自動車工場に巨大装置を開発&納入している友人は、朝から晩まで忙しい。「どこの国もビジネスは走り始めている。日本はニューノーマルへの対応が遅い」と述べる。彼の危機感は、ピンチをチャンスに変えて生産性を高めた海外勢が増え、日本勢との差が開いていることにある。それが、日本が世界に誇るトヨタがいる業界で起きている。化粧品・日用品企業の中長期計画が事業領域の拡大を強く打ち出したのは、創意工夫で強みを生かして潜在成長力を引き出す好機であることを示す。それを経営陣と現場が共有していることは、全国民に影響を与えているコロナ禍だからで、目に見える成果を期待している。花粉症は国民病の一つ。それに悩む人々を満員電車に乗せるのは忍びない。仕事も、生活も、変化を急ぐ。出社しなければ、対面でなければ――と「◯◯じゃないとできない」は、やっぱり禁句。これを改めて肝に銘じたい。