ご多分に漏れず、在宅時間が増えている。娘(1歳9カ月)や妻との会話はもちろん、毎晩、妻と交わす一献。新しい生活様式ならではの楽しみをこれからも享受したいとは思う。ただ、ムダな支出と言われがちな行動への欲求も高まっている。自宅の本棚にある沢木耕太郎さんの名著『深夜特急』が目に入り、旅に出たいと感じることもあれば、生ビールが恋しくなり、駅前のコンビニでセルフ販売していると聞きつけ、買ってはみたものの、いささか味気ないと落胆。やはり、近所の焼き鳥屋で冷えた生ビールを口に運びたい、とムダな支出への欲求を抑えきれなくなった。在宅中の生活を充実させるために、2020年上期は日用品が飛ぶように売れた。しかし、冷静になった今になって振り返ると、これはいらなかったな、という商品も少なくない。新型コロナ対策の情報は、ある程度整理され、生活者も日常を取り戻し始めた。在宅時間が増えた新生活で、人々の欲求が変わった点と鬱憤が溜まった点がある。その変化を捉え、満足させる商品を提供した企業は、秋冬以降も成長を続けられる。その逆も然りで、好調から一転する企業も出てくるだろう。20年の日用品企業は浮き沈みが激しくなるのか。21年以降にとっても重要な秋冬の競争が始まっている。★
月刊『国際商業』2020年10月号掲載