女優、竹内結子さんの突然の訃報には少なからず動揺した。若手女優の一人だった1990年代後半に出演した「世界ウルルン滞在記」をみて大ファンになった妻は、好んで作品を観賞し、演技のとりこになっていた。私も竹内さんの真っ直ぐな眼差し、屈託のない笑顔が好きだったから、第一報を目にしたときは呆然となった。心からご冥福をお祈りしたい。この訃報に触れたあと、化粧品業界の役割も頭をよぎった。化粧品の提供価値の一つは心身の充足感である。多くのブランドは、これからの肌が美しくなることへの期待感、使用中の心の満足感を引き出すものとして、香りや感触を丁寧に扱っている。新型コロナ発生で始まった新しい生活様式には慣れてきたものの、自分の意思が考慮されない生活スタイルの変更は、思いもよらぬストレスを生むことも実感している。それを日本だけでなく、世界中の生活者が味わっていると考えれば、新型コロナへの対応は、ワクチンや特効薬の開発は通過点に過ぎず、生活者一人一人への目配りが必要になる。日曜日の朝、改めてコロナとの戦いが長期戦であることを思い知らされた。長年、化粧品業界が培ってきた心身の充足感をもたらす知見は、一段と重みを増しているのも確かである。既成概念にとらわれない早期の応用を期待したい。

月刊『国際商業』2020年11月号掲載