良薬か、劇薬か。アマゾンがプロフェッショナルビューティ(美容師・美容室向け)市場への参入を計画。日本の理美容業界の商慣習に一石を投じる。

アマゾンのプロ向けECは日本に先駆け、2019年6月にアメリカでスタートしている。アメリカ版は、メーカーとの直取引で運営されているが、日本では、美容ディーラーを募り、アマゾン得意のマーケットプレイス型で展開する予定だ。

20年6月を目途にサイトの本格稼働を計画中で、3月2日にディーラー向けの説明会が計画されていた。ところが、コロナウイルスの影響拡大で、説明会が急遽キャンセルになり、アマゾンはディーラー1社1社と個別の折衝に切り替えた模様だ。

アマゾンとの取引を決めたディーラーは、3月中旬以降にアカウント開設と出店準備を行う。アカウントはディーラーが開設するのではなく、アマゾンの担当者が行う。アカウント開設には、メールアドレス、クレジットカード、銀行口座が必要だ。

商品の販売は、フェーズ1とフェーズ2に分かれている。詳細は不明だが、ディーラー関係者は「フェイズ1は契約してテスト的に販売する段階、フェイズ2はフルラインで本格的な販売をする段階と解釈している」と話す。

フェーズ1では、3月下旬から商品の出品を開始。ディーラーが商品を選定後、アマゾンが用意するフォーマットに情報を記載すれば、アマゾン側が登録を代行する仕組み。登録後、ディーラー側の最終確認を経て、販売を開始する。

一方、フェーズ2の出品準備は4月以降に始まる。登録に必要な項目は不明だが、「商品名」「ブランド名」「メーカー型番」などが必要になるという。そしてフェーズ2の出品登録、販売開始は6月以降としているが、「実施および開催時期は約束できない」としている。

アマゾンは、メーカーとの直取引ではなく、ディーラーに出品を募る理由として、①ディーラー流通が主たる日本の商習慣の遵守、②品揃えの豊富さ、などの美辞麗句を並べているが、実際は「ディーラー同士で、出品物の価格を競わせ、ダンピングすることが狙いと見られる」(大手ディーラー幹部)。

資料1 アマゾンは、リクルート・ホットペッパービューティのサロンボードなどに広告を出稿済み

ディーラー各社の参加意向は、まだ確認ができていないが、すでにリクルート・ホットペッパービューティのサロンボードなどで、バナー広告(資料1)が張られているところから見て、水面下では、参加を内諾している企業もあるのではないか。続報は、本誌「国際商業(https://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/)」の5月号(20年4月7日発売)に掲載する予定だ。