アデランスが構造タンパク質素材の産業化に取り組むSpiber(スパイバー)と共同研究をスタートした。スパイバーが独自開発する構造タンパク質を活用した新毛髪素材の共同研究開発を行う。2021年の完成を目指している。

アデランスの津村佳宏社長

共同研究は3月の発表会で明らかにした。まずアデランスの津村佳宏社長は、共同研究の前段として、創業からの歩みやCSR活動への取り組みとともに、人工毛材研究の歴史について紹介。同社は人毛以上の人工毛を作りあげることを目標に、1983年から人工毛の研究をスタート。91年には表面にキューティクルのような凹凸を再現し、紫外線に当たっても変色しない、かつ形状記憶という特製を持つ毛材「サイバーヘア」を開発した。その後2006年には、人毛の毛髄質、毛皮質、毛小皮という三層構造を人工的に再現し、水に濡れた質感やドライヤーによる変化などが極めて人毛に近い「バイタルヘア」を開発。これは世界24カ国で特許を取得し、今でもお客から好評を得ている毛材だという。

今回、アデランスとスパイバー社と協同研究をする理由は大きく二つ。一つは、アデランスが企業として化石資源の枯渇や環境問題への意識をむけていくべきだと考えたこと。もう一つは、経済の発展とともにパーマや毛染めが一般的になり、ウィッグに使用できるバージンヘアが年々減少、価格が高騰していることだ。これらの理由から、アデランスはスパイバーに共同研究の話を提案。津村社長は「人毛でも化繊毛でもない新たな毛材の研究開発を同社創立100周年に向けた大きなプロジェクトの一つとして取り組む」と語った。

続いて登壇したスパイバーの関山和秀取締役兼代表執行役は、「私たちがこれまで創り上げてきたタンパク質を材料として使いこなしていく技術とアデランスさんが行ってきた毛髪を開発していく技術を組み合わせることによって、今までに全く実現できなかったような新しい製品が開発できるのではないかと思っています」と共同開発への期待を滲ませた。

また、毛髪開発の技術指導としてアデランスと10年以上交流を続ける東京工業大学物質理工学院の鞠谷雄士教授も登壇し、アデランスとスパイバー両社の新たなイノベーションに期待と激励の言葉を掛けた。

左から鞠谷祐雄士教授、津村佳宏社長、関山和秀取締役兼代表執行役

左から鞠谷祐雄士教授、津村佳宏社長、関山和秀取締役兼代表執行役

目指すのは、人毛と同じようにカラーやパーマができる全く新しい毛材。会場では、開発途中の毛材を人毛用のカラーで赤く染色したものや、パーマ液でウェーブをかけたものなども展示された。関山代表からは研究開始からの短い期間で、既に4件の特許を出願しているとの報告もあり、順調に進展していると推察できる。