アデランスの新たな挑戦が始まっている。2018年12月15日にオープンした美容機器などを展開する「ビューステージ」ブランド初の実店舗「ビューステージ西武渋谷」。今までとは違うイメージを作り上げようと、あえて社名を表に出していない。この店舗の目的は業績の拡大だが、組織改革を促す大きなチャレンジにもなっているようだ。

アデランスビューステージ西武渋谷

アデランスビューステージ西武渋谷

アデランスの主力であるウィッグ事業は、育毛などの隣接市場はもちろん、他社・異業種による低価格帯ウィッグの販売増などで競争が激しくなっている。そうしたなか、事業構造の改革および経営基盤の強化が必要だとして、同社は17年2月に上場を廃止。強化策の一つとして、ヘアソリューションをコアとしたトータルビューティー、オーガニックヘアケアなど事業領域の拡大に注力するとした。その流れにあるのが、トータルビューティーブランド「ビューステージ」である。

新発想のドライヤー「N-LED sonic」

ビューステージが販売するドライヤー「N-LED sonic」

ビューステージは、1969年の設立以来、髪の専門家として生活者の髪の悩みをサポートしてきたアデランスが、その経験やノウハウをスキンケアやスカルプケアなどトータルビューティーサポートに生かすとして、先端美容をテーマに2016年4月につくったブランド。主に店販品として美容機器の開発・販売を行ってきたが、同ブランド初の実店舗「ビューステージ西武渋谷」は美容特化型サロンで、場所は美容関連店舗が集まる「セイブキレイステーション渋谷(西武渋谷店A館M2階)」、面積は約16坪だ。

従来のヘアケア商品や美容機器の販売はもちろん、自由に最新美容機器が体験できる「セルフケアコーナー」、スタッフによるサロンメニューを展開。無料の頭皮カウンセリングのほか、同店舗専用のヘアエクステンションを用いたエクステメニューとして、部分的なボリュームアップを提供する「ヘアアップエクステ」(7000円)と、ビビットカラーなエクステで髪にアクセントを加える「ビュープラスエクステ」(全17色・1束52本・2500円)を提供。ヘッドケアメニューでは、ドライで手軽に楽しめる「クイックケア」(2000円)と、アデランス独自の機材を取り入れ、水の力でしっかりと頭皮の汚れを取り除きながらスカルプケアを行う「ヘッドスパ」(7000円)を用意している。

開店から3カ月。AD事業部の住田雅史次長は「予約客数は増えているが、メニューの拡充、より効果的な宣伝など、やるべきことはまだまだある」と売上げ目標へのステップは道半ばと示唆するが、それは別の成果が生まれつつある。

ヘッドスパ施術スペース

ヘッドスパ施術スペース

じつは、アデランスは同ブランドの育成に向けて、ブランドを総括するビューティ&ヘルス事業部を設立。社内の様々な部署・分野がビューステージのプロジェクトとして、美と健康をテーマとする商品・サービスを提案。それを同事業部が総括し、具現化していく仕組みだ。事業や部署の垣根を越えて切磋琢磨することで、今までにない多彩な商品・サービスを生み出す考えだが、これは組織の活力を生む原動力になるのではなかろうか。

実際、2号店として18年12月21日にオープンした「ビューステージ青山通り」は、トータルビューティーをテーマにしたセレクトショップで、西武渋谷とは全く異なるサービスを提供する。取扱いは、ビューステージの商品のほか、ARTISTIC&CO.の美容機器や化粧品、「エステプロ・ラボ」ブランドの酵素ドリンクやダイエットサプリなど。「店に並べる商品は店舗スタッフが選びます。だからこそ商品の良さを理解していてお客様に提案ができる」と住田次長は手応えを口にする。当然、店舗スタッフの働き甲斐も高まるはずだ。

住田次長は「この事業は経営の柱になっていく」と力を込める。一つのブランドの名のもと多様なサービスを提供する、事業・部署の枠に囚われずにプロジェクトを募る。ビューステージを通じたフレキシブルな発想は、アデランス全体の進化を促す可能性を秘めている。