モバイル向けのショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」のEC機能である「TikTok Shop」は、日本での提供開始から半年の経過を記念したイベントを開催した。カテゴリー別の動向や新プロジェクト「TikTok Shop Local」の始動を伝え、新たなショッピングカルチャーの定着と発展を目指している。
TikTokは現在、150の国と地域に75の言語で提供している。2025年11月に発表した最新データによれば、日本の月間アクティブユーザー数は4200万人を突破。日本人口の約3人に1人がサービスを利用している計算だ。25年6月に公開したレポート「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」によれば、TikTokの日本における経済的・社会的影響は、国内名目GDP貢献額が4855億円、TikTok経由での推定消費額が2375億円、国内雇用者数への影響が4.2万人、国内クリエイター総数が226万人となっている。
TikTok ShopはTikTokアプリ内で商品の発見から購入までをシームレスに完結できるEC機能である。26年2月現在、18市場で展開を行っており、日本は25年6月30日にローンチした。提供開始以来、美容、ファッション、食品・飲料、生活用品、地域特産品など、幅広いジャンルのセラー企業が参画している。ショッピング動画やライブ配信といった複数のタッチポイントを通じてユーザーは気に入る商品を見つけ、その場で購入することができる。TikTokでは動画コンテンツを楽しみながら商品購入へと直接つながるこの新しい購買体験を「ディスカバリーEコマース」と定義づけて、日本での定着を図っている。
TikTok Shopのアクティブセラー数は、25年6月30日~12月末の期間において5万以上となった。ローンチ当初と比べると約3倍に成長を遂げている。クリエイター数は20万人以上となり、TikTok Shop Japanでの全体総額を見るとコンテンツ起点(動画・ライブ配信)のGMVが約70%だった。また、同期間にTikTok Shopで商品を購入した利用者の数は、初月と比べて20倍以上に増加した。イベントに登壇したTikTok Shop Japan邱開洲ゼネラルマネージャー執行役員は「コンテンツが全ての事業者にとって価値を持っており、中小事業者にとってはショート動画の投稿やライブ配信の実施が効率的で効果の良いプロモーション手段に、大手ブランドにとってはユーザーへのリーチを広げより広範なブランド施策を実現する手段となっている」と語った。
さらに顧客基盤は18~34歳のユーザーと35歳以上のユーザーがそれぞれ全体の約半数を占める重要な存在となっており、さまざまな層に支持されている。また日本だけの特徴として、コンテンツや購買行動の観点から見て、ライブコマースに対する受容度が高いことがある。
世界的に見ても、全体GMVの中でライブ配信経由のGMVの割合が最も高いのは日本だという。ユーザーはクリエイターと長期的で信頼に基づいた関係を築きやすく、結果、ロイヤルティーの高いファンコミュニティが形成されている。コンテンツと信頼を軸にしたモデルは、日本市場ならではだ。
このような土台を持つTikTok Shopはビューティーカテゴリーと非常に相性が良い。美容は信頼に基づいた売り方が特に重要なカテゴリー。ライブ配信はビフォーアフターや使用感などを分かりやすく表現し、商品やブランドに対する十分な理解、共感を得て商品購入まで進めることができる。さらに後押しとして、セット商品の提案を行うなど、オフラインの店舗と同じ情報を得られることで安心感を高める。こういった親和性の高さから、ビューティーカテゴリーの平均購入単価は中価格帯以上。これは、セラー・ブランドとの信頼関係の構築が、販売価格のレンジを広げたからだと考えられる。
またクリエイターの存在も重要だ。ビューティーカテゴリーには、ファッションカテゴリーと比較した際に、53%がアフィリエイトによって創出された売り上げであるという特徴がある。これは、クリエイターの存在が商品購入につながったことを意味し、販売業者やブランドのプロモーション・拡販のパートナーであるクリエイターの高いポテンシャルを証明した事例の一つであるから、今後の展開におけるポイントだ。
TikTok Shop Japan 黄益Senior Director of Beauty&Fashion Category担当は、今後のビューティーカテゴリーについて、①店舗ライブ実施を促進②ポイント、定期購入、CRMなど拡販ツールの導入③新商品発売、キャンペーンイベントなどに合わせてシーズナルテーマを展開する――の三つに取り組むとした。また、ファッションカテゴリーと共通で、ECクリエイターの育成と連携の支援を進めると発表した。「TikTok Shopには決まった型はなく、ブランドさまや事業者さまといろいろなディスカッションをして、新しい価値を作っていきたいです」(黄Senior Director)
花王が展開するグローバルメイクアップブランド「KATE」は、TikTok Shopで、広告、クリエイターによるライブ配信、自社によるライブ配信を組み合わせて立体的なコミュニケーションを行っており、ブランドへの理解と共感を醸成。参入前と比較してフォロワー数が約200%増加するなど、成長を遂げている。
イベントに登壇したKATEの岩田有弘ブランドマネジャーは、「これまでのECモールとの一番大きな違いは、購買の起点が検索ではなく共感にあるところ。ライブ配信を見たお客様が実際に試したいとオフラインの旗艦店に来店するなど、想像以上の流れがある。今後はブランドが一方的に伝えるのではなく、お客様と一緒に育てたり関係する多くのブランドと共に盛り上げていったりすることが国などの垣根を越えて自然に広がっていくことに期待したいです」と語った。
KATEのようにTikTok上での体験がオフラインでの来店や購買行動の刺激につながる動きがさらに進むかもしれないのが、新プロジェクト「TikTok Shop Local」だ。地域の特産品や中小事業者の商品などを全国へ届け、地域の魅力発信や地域経済の活性化に寄与することを目指す。
TikTok Shopでは既に、動画やライブ配信を通じて商品の背景や使い方、作り手の思いを伝えることで、ユーザーの共感や関心を起点とした購買が生まれている。このようなTikTokならではの発見性とコンテンツ力を生かし、広告出稿や専門的なEC知識に過度に依存することなく、地域の商品がユーザーに見つけてもらうことができる環境を提供することを目的としている。
地方の中小事業者の中には、既存のECモールへの出店を最初から諦めている場合も考えられる。そういった事業者が参入することで、地方発の商品が「バズ」につながることや、ファン化により実際に店舗を訪れて地域経済の活性化につながるといった事態が起こり得る。TikTok Shop Localは、26年3月に第1弾の実施を予定している。これを皮切りに、今後より多様な接点が生まれることは間違いがなく、新たな購買体験が定着する日も近いだろう。

























