免税手続きのデジタル化を手掛けるOceanは、11月1日から施行された新たな免税制度「リファンド方式」への移行に伴い、制度改正に伴う小売店や訪日外国人旅行者の課題を解説するとともに、独自の免税プラットフォーム「Ocean Tax Refund」を通じた対応方針を明らかにした。

新制度では、従来の購入時に消費税を免除する方式から、訪日客が店頭で税込価格を支払い、出国時に税関で商品の持ち出し確認を受けた後、消費税相当額の還付を受ける方式へと転換する。

例えば、税抜価格10万円の化粧品を購入する場合、従来は店頭で10万円を支払っていたが、新制度では11万円を支払い、税関での確認後に消費税相当額が返金される仕組みとなる。

Oceanの星野遼社長

Oceanの星野遼社長は、制度改正の背景として、免税品の国内転売などの不正対策、店舗が担ってきた確認責任の一元化、国際標準との整合性を挙げた。なかでも不正対策については、2022年4月からの2年間で、1回の入国あたり1億円以上の免税品を購入して出国した訪日客が延べ690人、購入額の合計が2,332億円にのぼり、うち9割近くが税関の検査を受けていなかったという政府公表データを紹介。

その一方で、「制度移行に伴い、店舗側にはシステム改修や返金処理、多言語対応などの新たな負担が生じる」と指摘。特に中小店舗では、コストや人手不足を理由に免税販売を取りやめる「免税離脱」が懸念されるとした。

星野社長は、免税対応を断念する店舗が増えることで、訪日客の買い物の選択肢が狭まることに懸念を示し、店舗の規模を問わず新制度に対応できる環境整備の重要性を強調した。

こうした課題に対応するために同社が開発したのが「Ocean Tax Refund」だ。初期費用と月額固定費を不要とすることで導入障壁を引き下げるほか、AIによるパスポート情報の自動読み取り機能を搭載。店頭での免税手続きを3ステップ、最短10秒で完了できる設計とした。POSシステムとの連携による購入情報の自動取り込みにも対応し、店舗スタッフの作業負担や教育コストの削減を図る。

訪日客向けには、専用アプリのダウンロードを不要、Webブラウザに加え、LINEやWeChatを通じた返金申請に対応。30以上の通貨に対応するなど、国籍や利用環境に左右されにくいサービスを目指す。すでに複数の大手小売企業で導入が進むほか、決済事業者やPOS関連企業などとの連携も広げている。

現状、同サービスの収益源は、訪日客への消費税相当額の還付時に差し引く手数料だ。店舗側から初期費用や月額固定費を徴収しないビジネスモデルを採用しており、星野社長は「将来的に店舗側を有料化することも現時点では考えていない」と説明している。

10月初旬時点で申し込み店舗数は500店を超えており、大手小売企業に加え、地方の中小店舗からも引き合いが寄せられている。今後は新制度施行後の市場動向を見極めながら、業種や地域に優先順位をつけて導入を拡大する方針だ。

さらに、中長期的には免税サービスを起点とした事業領域の拡張も視野に入る。Oceanに出資するヤマトホールディングスのイノベーション推進機能マネージャーの森憲司氏は、Oceanへの出資を決めた理由の一つとして、免税プラットフォームにとどまらず、データマーケティングなどへ事業を展開できる将来性を評価したと説明。免税手続きを通じて訪日客と小売店をつなぐ事業基盤の構築が、今後の新たな価値創出につながる可能性がある。

新制度への移行は、訪日客の購買行動や小売店の販売体制にも影響するとともに、化粧品や医薬品など、訪日客の購買需要が高い商材では、店頭での一時的な支払額の増加や還付手続きの煩雑さが購買の障壁となる可能性がある。免税対応の効率化と利用者の利便性確保が、インバウンド消費の持続的な成長を支える重要な要素となりそうだ。