ロート製薬は、ロートグループ総合経営ビジョン2030「Connect for Well-being & Longevity」の実現に向けて、独自素材オリゴミル(ミルク由来加水分解ペプチド、以下ミルクペプチド)の研究を進めている。今回、三重大学とロート製薬が2018年に締結した共同研究(研究代表者:大学院地域イノベーション学研究科西村訓弘教授、研究担当者:大学院医学系研究科・ゼブラフィッシュリサーチセンター島田康人講師ら)の成果として、ミルクペプチドが骨や血液に続き筋肉に対しても作用する可能性を明らかにした。同研究成果は、3月16~18日に開催された日本薬理学会第99回年会にてポスター発表した。タイトルは“ミルク由来加水分解ペプチド(HMPs)の体づくり促進作用~骨・血液への作用に続く骨格筋への新展開”。
研究成果のポイントは以下の三つだ。
①成長期の体づくりの基盤となる骨・血液・筋肉に着目し、これまでに骨形成促進および赤血球増加作用を確認してきたオリゴミル(ミルクペプチド)について、今回新たに筋肉(運動能力)への作用を確認
②オリゴミル(ミルクペプチド)は、瞬発的な動きや素早い運動に関わる筋肉(速筋)に関連する遺伝子の発現を高め、すばやく動く力に関わる筋肉への作用が示唆された
③同研究成果は、成長期における健康な体づくりを支える素材研究として、今後の商品開発への活用が期待される
オリゴミルは09年に素材開発された原料であり、免疫賦活能および抗アレルギー作用があることが明らかになっていた。数多くのペプチド(アミノ酸が2~50個程度つながったもの)が含まれており、ペプチドは生体を調節する作用を有することから、健康維持に対して非常に多くのポテンシャルがあると考えている。これまで、健康な体づくりを支えるカギとなる成長期に着目し、骨を成長させる、赤血球を増やすことを共同研究の中で明らかにしてきた。今回、成長期における筋肉への影響、さらには運動能力に着目して検討した。
成長期のモデルであるゼブラフィッシュ幼魚にオリゴミルを与え、8日後の遊泳能を観察した。オリゴミル投与なしの対象群と比較して、オリゴミル投与群では、瞬発的な動きの速さ(最大遊泳速度)が上昇することが確認された(図1)。
図1:最大遊泳速度(臨界遊泳速度)への影響<試験方法>
3カ月齢のゼブラフィッシュに、オリゴミルを含有する餌を1日2回給餌し、8日後に臨界遊泳速度(Ucrit)を測定した。2群間の比較には、Student’st-testを用いた。オリゴミルを含まないコントロール餌群と比較して、オリゴミル含有餌群では、臨界遊泳速度が有意に(p<0.05)増加しており、瞬発的な運動能の促進が示唆された。データは平均値±標準偏差で表示(三重大学実施)。
なお、臨界遊泳速度は、魚をだんだん速い水流にさらしていったときに、これ以上は流れに逆らって泳ぎ続けられない限界の速度を指し、持久的な遊泳能力や全身の運動能力をみる標準的な指標である。
さらに、骨格筋における遺伝子発現解析を行ったところ、骨格筋形成促進に関わる遺伝子群、筋肉の中でも瞬発力を担う速筋に関わる遺伝子群の発現増加が明らかとなった(図2)。
<試験方法>
3カ月齢のゼブラフィッシュに、オリゴミルを含有する餌を1日2回給餌し、14日後に骨格筋を採取し、遺伝子発現解析を実施した。2群間の比較には、Student’st-testを用いた。オリゴミルを含まないコントロール餌群と比較して、オリゴミル含有餌群では、筋肉の収縮に関与するタンパク質であるミオシンの発現量の増加の促進作用、筋芽細胞の分化誘導に関連する、pax3a(筋分化の転写因子)、myod(筋肉細胞への分化を誘導するマスター遺伝子、筋分化調節因子)、srf(血清応答因子)の遺伝子発現が有意に促進された(p<0.05)。また、速筋に関連するtnnt3b、tnni2aの発現量が有意に増加していることが明らかとなった。データは平均値±標準誤差で表示(三重大学実施)。
同研究により、ミルクペプチドが運動能力、筋肉構造、筋形成に関わる分子機構といった複数の側面から筋肉に作用することが示された。これまでに明らかにしてきた骨および血液への作用に加え、体づくりに重要な機能へ広く関与する素材である可能性が示唆された。同社は今後も未来を担う子どもたちの成長を応援できるような研究成果を積み重ねていく。























