大阪大学大学院薬学研究科 マンダム先端化粧品科学協働研究所の鳥山真奈美特任准教授(常勤)、東京大学医科学研究所の石井健教授、名古屋市立大学大学院医学研究科の森田明理教授、大阪大学微生物病研究所の元岡大祐講師らの研究グループは、慢性的な皮膚炎症や肌の敏感化に対し、従来の一時的な鎮静ケアにとどまらない“炎症の再発予防”を目指す新たなアプローチを提案した。

慢性的な皮膚炎症や肌の敏感化に対し、従来のスキンケア技術では、起きてしまった炎症に対する「一時的な鎮静ケア」にとどまっており、細胞に刻まれた「炎症記憶」に直接アプローチして“炎症の再発そのものを防ぐ”ことが困難だった。

同研究では、炎症性サイトカインの刺激によって表皮の角化細胞に一次繊毛(primary cilia)が形成され、その存在が炎症記憶を持つ細胞の指標となる可能性を示した。オミクス解析と化合物スクリーニングを組み合わせた独自の探索により、一次繊毛形成に重要な役割を果たすERKシグナルに着目し、ククルビタシンIIAやシリマリンといった、一次繊毛形成を抑制する有望な化粧品成分候補を見いだした。さらに、アトピー性皮膚炎様の症状を有する被験者を対象とした評価において、シリマリンを含む植物エキスが肌状態の改善効果を示す可能性も確認された。

同研究成果により、従来の一時的な鎮静ケアにとどまらず、“炎症の再発予防”という新たな視点から、肌の安定性とレジリエンス向上に貢献する次世代スキンケア技術として期待される。

同研究成果は、4月13日にフランスで開催された、化粧品分野における革新的なプロジェクトを国際的に表彰するコンテスト「The Cosmetic Victories 2026」において、世界中の応募の中から学術部門(Academic prize)で最優秀賞を受賞した。タイトルは“From Biology to Beauty:Primary Cilia–Controlled Cosmetics for Immune Memory Regulation and Sustainable Innovation”。
大阪大学大学院薬学研究科 マンダム先端化粧品科学協働研究所によるThe Cosmetic Victories 2026の学術部門(Academic prize)最優秀賞受賞は2度目となる。また同研究は、JSPS科研費24K11450と内藤記念科学振興財団の助成を受け行われた。

【鳥山真奈美特任准教授(常勤)のコメント】
「『一次繊毛』と呼ばれる微小な細胞小器官の機能には、依然として未解明な点が多く残されています。今回、一次繊毛が皮膚における『炎症記憶』に関与している可能性を見いだした際、生命維持の根幹を支えるその巧妙なメカニズムに深い感銘を覚えました。本研究の成果が、誰もが自身の肌に自信を持てる社会の実現に貢献することを切に願っています」