ロート製薬は、ロートグループ総合経営ビジョン2030「Connect for Well-being」の実現に向け、動物実験代替法を活用した製品開発および安全性設計に取り組んでいる。デリケート部位専用洗浄剤の安全性評価を目的に、三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデルを用いた刺激性評価系を構築し、自社開発品の安全性をin vitroとヒト実使用試験の双方で確認した。
同研究内容は、2025年11月1~3日に開催された日本動物実験代替法学会第38回大会にて発表した。
近年、デリケート部位のにおいや乾燥、かゆみなどの悩みを解消するため、フェムケア製品への関心が高まっている。一方、デリケート部位は皮膚が非常に薄く(図1)、バリア機能も弱い上、粘膜部位にも隣接していることから、刺激リスクへの十分な配慮が必要とされる。
そのため、フェムケア製品の開発には一般的な皮膚用製品以上の慎重な安全性設計が求められるが、デリケート部位に特化したin vitro試験法は標準化されておらず、製品開発に活用可能な評価系の確立が課題となっていた。そこで同研究では、ヒト外陰部由来細胞から再構築された「三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデル」を用い、曝露条件や評価手法を独自に検討することで、デリケート部位の刺激性を評価する新たなプロセスを設計し、製品開発に取り入れた。
結果1.三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデルによる刺激性評価
同研究では、自社のデリケート部位専用洗浄剤および敏感肌用洗浄剤を試験サンプルとして用いた。これらの製剤は、いずれも事前の安全性試験にて皮膚刺激性に問題がないことを確認している(表1)。
三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデルを用いてデリケート部位専用洗浄剤の刺激性評価を行ったところ、細胞生存率が94.8±0.7%と高く、刺激性が低いことが示唆された。また同一試験条件下における敏感肌用洗浄剤の細胞生存率は80.9±2.4%であり、デリケート部位専用洗浄剤の細胞生存率の方が高い傾向にあった(図2)。
なお、健常皮膚の刺激性評価で一般的に用いられる三次元再構築ヒト表皮モデルを用いて、デリケート部位専用洗浄剤および敏感肌用洗浄剤の刺激性評価を行ったところ、細胞生存率はそれぞれ107.2±1.7%および102.4±8.4%と高く、刺激性が低いことが確認された。デリケート部位専用洗浄剤と敏感肌用洗浄剤の間で、刺激性における有意な差は認められなかった。
結果2.ヒト実使用試験での安全性確認
21~49歳の女性25名を対象に、デリケート部位専用洗浄剤を4週間連用する実使用試験を実施した結果、「ほぼ安全である~安全である」ことが確認された。
同研究の結果から、三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデルは、三次元再構築ヒト表皮モデルよりも刺激性に対して高い感受性を有することが示唆された。また、ヒト実使用試験における安全性評価結果と照らし合わせると、三次元培養ヒト膣粘膜上皮モデルを用いたin vitro評価は、デリケート部位専用製剤の開発において、ヒトでの安全性確認に先立つ事前評価法として活用できる可能性が示された。

























