ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、角層吸着性のある天然由来保水成分「Mal2Far」でエモリエントオイル(水分の蒸散を防ぐオイル成分。肌を柔らかくする作用も持ち、主に乳液やクリームなどに配合される)を包み込み、洗顔料に安定して配合する技術を確立した。洗顔後もエマルションとして肌にとどまり続け、高い保湿力とやわらかな手触りを実現。まるで保湿スキンケア品のような使用感を可能にする。
洗顔料は、皮脂や汚れとともに肌の生体保湿成分も洗い流してしまうことがあり、洗顔後に乾燥やつっぱりを感じやすいという課題があった。保湿成分などを配合しても十分に肌に残らず、しっとり感を求める声が多く寄せられていた。一般消費者を対象に実施したポーラ化成工業によるアンケート調査では、洗顔料に対し、「使用後の肌のしっとり感」を望む人が最も多いことが確認された(図4)。

そんな中ポーラ化成工業では、肌表面の角層に吸着する性質を持つ天然由来保水成分「Mal2Far」を洗顔後の肌に残存させ保水力を高める技術を開発してきた。
同研究では、うるおい実感をさらに向上させようと、「Mal2Far」でエモリエントオイルを乳化し、洗顔料に配合する新技術(角層吸着型エマルション)を開発した。すすぎ後も肌にエマルションのベールが残ることで、驚くほどのしっとり感や柔軟感を与える(図1)。
洗顔料の中にエマルションが存在しているか、また洗浄後に角層に吸着するかを検証するため、赤の蛍光色素で染色したエモリエントオイルを「Mal2Far」でくるんだエマルションを洗顔料に配合した。
この洗顔料を水に溶かし顕微鏡で観察すると、エマルションの滴が多数存在する様子を見ることができた(図5)。これにより、洗顔料中にエマルションとして安定して配合できていること、水が混ざったあとも崩壊せずに存在することが確かめられた。
次に、肌を洗浄したときエマルションが角層に吸着するか検証した。角層細胞を洗顔料の水溶液に浸し水ですすいだ後は角層細胞全体がまんべんなく赤く光って見えたことから、オイルが角層細胞の表面全体に均一に吸着しているものと考えられた(図6)。
エマルションは図1のように角層に吸着し、すすぎで流されることなくエマルションのベールとなって表面に残ると考えられる。肌の上に形成されたベールが、洗顔後の水分の蒸散を防ぎうるおいを守るとともに、オイルによる柔らかい感触を肌に与えてくれると期待できる。
角層吸着型エマルションを配合した洗顔料を実際に使用した評価では、洗顔後の肌の保湿感とやわらかさのいずれも高評価を得た(図2)。また、使用後のうるおい保持力を測定したところ、乳化したエモリエントオイルを配合した洗顔料は、非配合の洗顔料に比べてうるおい保持力が1.5倍に向上したことが確認された(図3)。




























