ロート製薬は、ロートグループ 総合経営ビジョン 2030 である「Connect for Well-being」 の実現に向けて、加齢に伴い皮膚が過度に脆弱化し、皮膚裂傷や褥瘡(じょくそう)など皮膚障害リスクが高まる「スキンフレイル」という状態に着目して研究を進めている。今回、セラミド配合のスキンケア製剤(ボディウォッシュ・乳液)を用いて高齢者を対象とした臨床試験を行い、日々のスキンケアがスキンフレイルリスクに与える影響を検証した。
この検証結果は、高齢者の日々のスキンケアが、スキンフレイルの予防に寄与する可能性を示唆するものと考えられる。
日本は超高齢化社会を迎え、看護・介護の担い手不足が深刻化している。看護・介護現場では、皮膚裂傷や褥瘡などの皮膚トラブルが発生しやすく、治療には専門的な手技と長い時間を要するため、介護者の負担が大きいことが課題となっている。高齢者の皮膚は、加齢に伴う乾燥や栄養状態の変化などにより皮膚バリア機能が低下し、わずかな刺激でも傷つきやすくなる傾向がある。こうした皮膚トラブルを防ぐために、日常的な皮膚観察や体位変換に加えて、「予防的スキンケア」を日常に取り入れることの重要性が高まっている。
予防的スキンケアを行う上で鍵となるのが、「スキンフレイル」という概念だ。スキンフレイルとは、加齢や乾燥によって皮膚が脆弱化し、褥瘡のリスクを高める状態のことで、2019年に提唱された。スキンフレイルは、適切なスキンケアによって進行を遅らせることが可能(可逆性)とされており、日々のスキンケアが重要となる。
一方で、社内で実施したスキンフレイルに関する認知度調査(n=187)では、「スキンフレイルという言葉も意味も知らない」と回答した人が7割を超える結果となった。さらに、「言葉も意味も知っている」と答えた人の中で、スキンフレイルが予防可能であることを認識していたのは半数以下にとどまった。この結果から、高齢者が日々健やかに過ごすため、スキンフレイルにおける予防的スキンケアの重要性を社会全体に広く認知してもらう必要がある。

今回、皮膚疾患を有しないドライスキンの高齢者を対象とした臨床試験を実施し、日々の予防的スキンケアの有効性を科学的に検証し、その重要性を社会に広く啓発することを目指した。
結果1:セラミド配合スキンケア製剤の使用で、ドライスキンを有する高齢者のSFCスコア、SRRCスコアが有意に低下した
セラミド配合スキンケア製剤の使用で、連用開始時(介入前)と比較すると連用4週間後(介入後)にSFC(スキンフレイルスクリーニングツール)とSRRC(ドライスキンスコア)の点が有意に低下し、スキンケア製剤の継続的な使用により肌のうるおいが高まり、ハリを与え、スキンフレイルリスクが低下したことが示唆された(図2、3)。


結果2:セラミド配合スキンケア製剤の使用で、介入後に角層水分量の変化率が有意に増加
介入前と介入後を比較して、角層水分変化量の変化率が有意に増加していた(図4)。

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同試験結果は、高齢者が自ら日々適切なスキンケアを継続することにより、皮膚の健康維持やスキンフレイル予防に寄与する可能性を示唆するものであり、介護・看護現場におけるケアの一助となることも期待される。
今後は、同研究の成果をもとに、深刻なスキントラブルを防ぐ取り組みへの応用を目指す。また、日用品によるセルフスキンケアの重要性を社会に広く伝え、高齢者が日々スキンケアへ取り組む意識の向上を図りながら、研究を継続していく。科学的根拠に基づく予防的スキンケアの普及を通じて、生活の質向上と社会への貢献を目指す。























