オーラルケア市場は今、確実に〝プレミアム化〟の道を歩んでいる。国内のハミガキ市場は、これまで低価格帯から中価格帯の主力商品が支えてきたが、近年は高価格帯の伸びが顕著である。インテージのSRI+によれば、2024年時点で約1440億円規模の市場は、30年には約2000億円に迫ると見込まれ、そのうち66%を高価格帯が占めると予測されている。価格帯別に見ると、471〜710円帯、711〜951円帯が順調に成長し、952円以上の最上位カテゴリーは年平均成長率8.6%と特に高い伸びを示す。これは「より高くても付加価値のある製品を選ぶ」という消費者意識の変化を端的に反映している。この高価格帯の中でも最も大きなシェアを占めるのが歯周病ケアである。

これには、感染症流行を経た自己防衛意識の高まりを背景に、「トラブルが起きる前に自分でできるケアをしておきたい」というニーズが顕在化していることが挙げられる。消費者のオーラルケアに対する姿勢も大きく変わりつつある。コロナ禍を経て感染症リスクへの警戒が続く中、人々の間で「健康は自分で守るもの」という自己防衛意識が浸透した。免疫機能を高める食品やサプリ、睡眠の質を管理するデバイスなどが普及したのと同様に、オーラルケアにおいても「予防」を目的とした投資が日常化している。実際に、歯周病予防ハミガキユーザーの声としては「歯医者にも行くけれど、自分でできることはやっておきたい」「今のハミガキに不満はないが、より良いものがあれば変えたい」「年齢に合わせてハミガキを高いものに変えるのは当たり前」といった意識が目立つ。統計的にも、19年に344円だったハミガキ購入単価は、24年には399円へと上昇し、生活者が「価格に見合う価値」を積極的に求める姿勢を裏付けている。特に50〜60代女性においては、従来の「症状が出てから対応する層」に加え、「定期健診を受け、予防意識を持って先手を打つ層」が拡大していることが分かる。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

ログイン