新日本製薬は、皮膚の最表面である角質層下部の顆粒層に存在するタイトジャンクションの皮膚透過について、名古屋大学と、名古屋大学発ベンチャー企業BeCellBarと共同研究を行った。その結果、米ぬかから抽出されたポリフェノールの一種「フェルラ酸」と日本の伝統的な薬草として知られ、その豊富な効能から現代でも幅広い分野で応用されている「センブリエキス」によりタイトジャンクションの緩和および皮膚透過が促進される効果を確認し、特許を取得した。同研究で得られた知見は、成分の浸透性向上に寄与することが期待されており、今後、同社のスキンケアブランド「パーフェクトワン」および「パーフェクトワンフォーカス」などに活用していく。
特許の概要は以下の通り。
●登録番号:特許第7691564号
●登録日:2025年6月3日
●発明の名称:クローディン量の減少剤、タイトジャンクション緩和剤、化粧料組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物及び食品組成物
同社は、美しい肌を保つにはバリア機能を高め、成分を効率的に浸透させることが重要であると考えており、新たな有用成分の探索や成分の機能性研究、浸透技術の応用研究、生体バリア機能に関する研究に長年取り組んでいる。同研究では、皮膚の水分保持やバリア機能の維持、また皮膚透過の促進に関与するタイトジャンクション(以下、TJ)に着目した。
TJとは、皮膚の最表面である角質層下部の顆粒層に存在し、細胞同士を接着させる機能を持つ。細胞同士の接着を強めることで隙間が閉じ、皮膚の水分蒸散や外部からの異物の侵入を防ぐバリア機能を発揮することができる。一方で、このバリア機能が強すぎると成分の肌への浸透を妨げてしまうことから、同社は細胞同士の接着を一時的に緩和させ、浸透を促進するアプローチに注目し、こうした効果をもたらす新しい有用成分の発見を目指して研究に着手した。
数十種類の成分やエキスを対象に、分化誘導したヒト表皮角化細胞(以下、NHEK)を使ってTJを構成するクローディン(以下、CLDN。細胞間結合の様式の一種で、TJの形成に関わる主要なタンパク質)量と、TJ透過性を検証した。その結果、「フェルラ酸」と「センブリエキス」をそれぞれ添加することでCLDN量が減少し、TJ透過性が高まることを確認した。同研究の結果から、「フェルラ酸」と「センブリエキス」にはTJを緩和させ、皮膚透過を促進する効果があり、成分の浸透を高めることが期待される。
研究1.CLDN量を測定
CLDN量は、増加すると細胞間の隙間が閉じ、逆に減少すると隙間が生じると考えられる。分化誘導したNHEKに「フェルラ酸」、「センブリエキス」をそれぞれ添加し、CLDN量を測定した結果、CLDN 1(皮膚、肝臓、腎臓などで発現し、皮膚の水分保持やバリア機能を持つ)とCLDN 4(消化器官、腎臓、膵臓、肺などで発現し、皮膚において選択的な物質の透過を調節する役割を持ち、バリア機能を維持する)の量が減少、すなわちTJが緩和することを確認した。
研究2.TJ透過性を測定
分化誘導したNHEKに「フェルラ酸」、「センブリエキス」をそれぞれ添加し、分子量4000の蛍光色素を使って透過性を検証した結果、蛍光強度が増加、すなわち透過性が高まることを確認した。
①「フェルラ酸」添加によるTJ透過性(図1)
分化誘導したNHEKに「フェルラ酸」を添加した場合、未添加と比較して蛍光強度が1時間後に19%、6時間後に44%増加することを確認した。
②「センブリエキス」添加によるTJ透過性(図2)
分化誘導したNHEKに「センブリエキス」を添加した場合、未添加と比較して蛍光強度が6時間後に17%増加することを確認した。
同社は、美と健康の領域で「新しい」価値をお客さまにお届けするため、スマート“ライフ”サイエンスという研究方針を掲げている。今後も美と健康の領域で、お客の悩みを解決するため、大学やパートナー企業と共に新素材の研究を推進していく。