資生堂の2025年12月期第3四半期業績は、売上高は前年同期比4.0%減の6938億1700万円、コア営業利益は9.7%増の300億8000万円、営業利益は555億円減の333億5000万円の欠損、親会社の所有者に帰属する四半期利益は447億円減の439億8300万円の欠損となった。

セグメント別の業績をみると、日本事業は売上高が0.1%増の2191億500万円。「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「エリクシール」を中心としたコアブランドで、最新技術を搭載した新商品の貢献などにより、力強い成長を実現。一方、インバウンド消費は、訪日外国人旅行者数が増加したものの、旅行者の消費行動変化や内外価格差の縮小を受けた購買意欲の低下等による減速が見られた。コア営業利益は72.0%増の279億2800万円で、構造改革と生産性向上が奏功した。

中国・トラベルリテール事業は、中国において「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」が力強い成長を継続。特にEコマースが大きく伸長した。「SHISEIDO」はEコマースが好調。一方、トラベルリテールでは、旅行者中心のビジネスへの移行が順調に進んだものの、中国海南島、韓国において、中国人旅行者の消費低調による厳しい状況が継続し、事業全体での売上高は7.6%減の2400億3600万円の減収。コア営業利益は売上減に伴う差益減を、固定費低減などの構造改革効果により一部相殺し、5.9%減の466億7600万円となった。

アジアパシフィック事業の国・地域では、タイを中心とする東南アジアや韓国で成長し、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」で増収した一方で、台湾での市場縮小の影響を受け、売上高は1.4%減の525億400万円。コア営業利益は、売上減に伴う差益減とともに、インフレに伴う人件費の増加などが影響し30.6%減の17億5800万円となった。

米州事業では、「SHISEIDO」が新商品好調、「クレ・ド・ポー ボーテ」がベースメイク好調で増収となった一方、「Drunk Elephant」は前年比マイナス成長が継続。売上高は10.3%減の781億8700万円となった。コア営業利益は、売上減に伴う差益減、原価率悪化および関税影響による減益を、固定費低減などの構造改革効果により一部相殺し、前年から39億6000万円減の75億8600万円の欠損となった。

欧州事業は「Drunk Elephant」の苦戦は継続した一方、新商品を発売した「Zadig&Voltaire」や「narcisorodriguez」などのフレグランスが力強い成長を示したこともあり、売上高は5.0%増の961億2100万円、コア営業利益は20.6%増の9億1500万円となった。

25年12月期通期業績は前回予想を下方修正。売上高については、日本におけるインバウンド消費の減速、米国における市場の減速や「Drunk Elephant」の回復遅れなどにより、300億円減額し、前年比2.6%減の9650億円。コア営業利益は予想を据え置き、0.4%増の365億円。営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、米州事業の収益性低下を受けて実施した減損テストの結果、のれんの減損損失468億円を計上したことなどから減額。営業利益は前回予想から555億円減額の420億円の欠損。親会社の所有者に帰属する当期利益は580億円減額の520億円の欠損とした。

資生堂は、新たに2030年に向けた「2030 中期経営戦略」を策定。前中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」および「アクションプラン 2025-2026」において、注力ブランドへの選択と集中、グローバルでの抜本的な構造改革を遂行し、より強固な収益基盤の構築に取り組んできたが、新たな中期経営戦略では、その基盤をもとにブランド価値を最大化するためさまざまな取り組みを進め、持続的な成長に不可欠な新たな価値創造へ再投資できる好循環を生み出すとしている。

まずは、2026年はアクションプランで掲げたコア営業利益率目標の7%を確実に達成し、そこからコスト構造最適化により利益率を3%向上させる計画。そして、25年~30年までの年平均売上成長率を市場を上回る+2~5%と設定し、2030年コア営業利益率10%以上の実現を目指す。