タカラベルモントの開発本部 化粧品研究開発部は、2025年12月8〜10日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された「第3回 日本化粧品技術者会 学術大会」において、毛髪研究に関する口頭発表1題、ポスターセッション1題の計2題を発表。同社独自の「イメージング技術」と毛髪浸透技術「ヘアメデュラケア」を応用した研究成果を紹介し、国内の化粧品技術者から大きな注目を集めた。

発表内容と当日発表者はそれぞれ以下の通りだ。

■口頭発表

「⽑髪から“美と健康”を可視化する基盤技術の構築― ホルモン局在の可視化・数値化を通じて ―」

発表者:萬成哲也氏、山下萌絵氏、金子聖氏

これまで毛髪中に存在する神経伝達物質・ホルモン・アレルギー関連物質などのバイオマーカーの解析は、「どれくらい含まれているか」「おおよそどこに存在するか」といった量的情報の把握が中心だった。しかし今回、同社独自の「縦×横切り」イメージング技術により、自然に抜け落ちた毛髪の毛球部を対象として、多様なバイオマーカーが“どこで・どのような形で存在しているか”を高精細に可視化し、その分布をスコアとして定量評価することにも成功。

このような空間把握力に優れた同技術は、それ自体で新たな評価軸となるだけでなく、既存の量的アプローチと組み合わせることで、毛髪バイオマーカーの「美」と「健康」領域における新しい役割と可能性をさらに広げることが期待できる。

「縦×横切り」のイメージング技術による分析(コルチゾールの場合)

【開発本部 化粧品研究開発部 基礎研究所 基礎研究担当スペシャリスト 萬成哲也氏のコメント】

毛髪バイオマーカーは他分野では活用が進む一方で、美容・健康分野での応用はまだ限定的です。毛髪は体内情報を蓄える「蓄積媒体」であると同時に、ホルモンなどの作用を受ける「標的組織」でもあり、さらにハリ・コシやクセといった形状にも関わるため、「どれくらい含まれるか」だけでは評価しきれないことが、その一因と考えられます。

本研究では、イメージング技術により毛髪内部に「どの成分が・どこに・どんな形で」存在するかを可視化し、その空間情報を数値化する基盤を構築しました。今後、この情報を既存の量的指標や臨床データと組み合わせることで、一人一人の“内側の状態”と髪のコンディションを結びつけたパーソナライズドなビューティーケアへの展開を目指します。

■ポスターセッション

「頭⽪からだけではなく⽑髪内部から育⽑する時代へ〜⽑髪内部を経由した育⽑成分の新規浸透⽅法の検討〜」

発表者:荒井佑⾹氏、本村友希氏、吉⽥直史氏、萬成哲也氏、原⽥佳祐氏

同社独自の高浸透技術「ヘアメデュラケア」を駆使し、頭皮に塗布する方法以外の育毛成分の浸透方法を確立。育毛成分として知られるセファランチン(以下、Cep)を高浸透技術「ヘアメデュラケア(以下、HMC)」により毛髪に浸透させると、HMCで処理した毛先から離れた部位(毛髪中間部や毛根部)においてもCepが存在するということが明らかとなった。さらに中間部や毛根部の毛髪内に存在するCepの量は、他の毛髪浸透技術を用いた場合よりも、HMCを用いた場合の方が多いということが分かった(図1)。

図1:HPLC(高性能液体クロマトグラフィーと呼ばれる分析方法)による非処理部の溶出液中におけるCep検出

Cepはキューティクルを介してではなく毛髪の内部を介して浸透し、毛根最下部まで至っていることも明らかとなった(図2)。

図2:MALDI-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析)による毛根部のCepマッピング技術

【開発本部 化粧品研究開発部 第二研究所 荒井佑香氏のコメント】

エイジングにまつわる悩みの中で、「薄毛」はその人の活力や自信の低下につながる大きな悩みと捉えています。今回の研究成果を応用した製剤を、従来の頭皮にアプローチする育毛剤と組み合わせることで、毛根部へのより効果的なアプローチが可能になると期待しています。今回発見した技術は、従来とは異なるコンセプトの育毛製剤開発につながる可能性があり、製剤化や塗布条件の最適化とあわせて、実用化を目指し、育毛効果の検証を進めていきます。