タカラベルモントは、毛髪の中心部に存在する「メデュラ」における構造変化を、独自の開発技術を用いて解明。10月21から31日に開催された国際化粧品技術者会連盟の学術大会「IFSCC Congress 2020 Yokohama」口頭発表において、「メデュラ」をケアすることで毛髪の外観を美しく変化させる新しいテクノロジー「Hair Medulla Care」を発表した。

同社ではこれを記念し11月26日に、タカラベルモント青山本社において「世界初・毛髪発見サイエンステクノロジープレスセミナー」を開催した。

冒頭あいさつに立った吉川朋秀常務取締役は、タカラベルモントのこれまでの研究開発の歴史について説明。現在滋賀の湖南市に設置している化粧品研究開発センターにおいて、37名の研究員が毛髪科学、皮膚科学、印象学、人間工学、生体科学の五つの分野で研究開発を推進。「製品研究だけではなく、基礎研究にも注力し、産学共同研究も積極化。昨今の毛髪に関する研究が業界の新たな製品の価値を生み出し、タカラベルモントの製品の重要な根幹となっている。プロフェッショナル美容業界のフロントランナーとして、業界の枠を超えて価値を提供できるよう期待している」と語った。

吉川朋秀常務取締役

続いて、タカラベルモント化粧品研究開発部第一研究所の萬成哲也研究員が「新しいコンセプト〝ヘアメデュラケア〟―毛髪のメデュラの構造を解き明かすことで白髪の見た目を変化させる―」のテーマで講演。新規毛髪内部監察技術、毛髪中心部(Medulla)における新発見、新ヘアケア概念「Hair Medulla Care」の三つの新知見について説明した。これまで毛髪の内部を観察するには毛根部においては毛髪を盾にスライス、毛管部においては輪切りにスライスするのが一般的だった。今回タカラベルモントでは、毛管部においても縦にスライスすればより毛髪について深く知ることができるとの思いのもと、毛管部を縦に切る技術を世界で初めて、独自で開発。これにより、毛管の各部位の毛髪内部で何が起こっているかを、直接的かつ多角的に観察することを可能にした。

この技術を活用し、同社では毛髪の最内部であるメデュラに関する研究を深掘り。黒く見える〝ブラックメデュラ〟、白く明るく見える〝ホワイトメデュラの〟2種類が存在することを発見し、空洞の数が異なる。つまりホワイトメデュラはブラックメデュラに比べ穴が少なく、これが見た目の差につながっていることがわかった。

この発見から、髪の最深部にあるメデュラに直接的にアプローチする「Hair Medulla Care」を開発。毛髪に対して独自の処理を行うことでメデュラの状態を目的に応じてコントロールするための技術。例えばブラックメデュラの状態からホワイトメデュラの状態に変えることで、黒髪になじみやすい白髪にすることが可能になる。昨今では白髪を染めるのではなく、自然な白髪を楽しむといった生活者も増えてきており、そうした潮流に合致した商品開発に活かすことも可能になる。

萬成哲也研究員は、「新次元のヘアケアの可能性を秘めている」と期待を示した。

萬成哲也研究員

その後、上條洋士研究員が、「iPS細胞の皮膚研究と化粧品開発への応用~iPS細胞をもちいたひふの老化研究、および有効成分の探索~」について登壇。iPS細胞そのものについて、研究内容、製品への応用について説明した。iPS細胞を用い老化がどのように起こっているかを研究した結果、幹細胞で起こっていることを解明。この結果をもとに成分を探索した結果、幹細胞を選択的に増加させることができる成分を突き止めた。これにより、自発的にうるおいを生み出すことも可能になるという。

「今後、幹細胞研究を新たなヘアケアへと展開し、本質ケアへと応用していく。既存の考え方とは全く異なる新しい概念をつくっていく」(上條研究員)

上條洋士研究員

タカラベルモントではこうした研究結果を搭載した次世代ヘアケアブランドを2021年にリリースする方針だ。