ポーラのPOLAイノベーションセンターは、ブドウの品種「神紅(しんく)」の副梢エキスの研究を進め、副梢エキスに紫外線による皮脂酸化を抑制する効果があることを発見した。
同研究成果は2025年9月10~13日にベルギーで開催される第54回欧州研究皮膚科学会のポスター発表部門において、島根大学生物資源科学部生命科学科の室田佳恵子教授と共同で発表する。
論文タイトルは「Inhibition of ultraviolet-induced lipid peroxidation by lateral shoot extract of ‘Shinku’, a new red grape cultivar developed in Shimane Prefecture, Japan」。発表内容は島根県産神紅の副梢から抽出したエキスの紫外線による脂質過酸化を抑制する効果について。
神紅はベニバラードとシャインマスカットを交配して島根県が開発した大粒・赤色系ブドウの品種である。ブドウの生産過程では、秋〜冬の落葉後に剪定をしたり、春〜夏に伸びすぎた不要な副梢(新梢〈今年伸びた枝〉の葉の脇から出てくる葉茎)を摘み取り、日当たりの確保を行う。この過程で、副梢や剪定枝などが多量に廃棄されている。
島根県産神紅の生産過程で廃棄されるこの副梢を50%エタノール水溶液で抽出して、副梢エキスを調製した。

神紅

副梢
皮脂が酸化し過酸化脂質へと変化することは紫外線を浴びることで促進される。この過酸化脂質は、肌のバリア機能を低下させ、炎症やくすみ、毛穴の目立ちといった肌トラブルの一因となることが分かっている。肌や髪には皮脂の酸化を防ぐことの重要性が示唆されている。皮脂に最も多く含まれる脂肪酸のオレイン酸に副梢エキスを添加し、紫外線照射後の過酸化物価を評価した。

オレイン酸溶液に紫外線を照射して過酸化物価を過酸化物価試験紙(柴田科学)を用いて評価
オレイン酸(皮脂)に紫外線を照射すると、過酸化物価(油脂に含まれる過酸化物の量を示す値)が増加する(紫色)。副梢エキスは紫外線によるオレイン酸の過酸化物価増加を抑制する効果があることが示された(ピンク色)。

副梢エキスの紫外線によるオレイン酸の酸化抑制効果(果実エキス、剪定枝エキスと比較)
また同研究を発表する欧州研究皮膚科学会(European Society for Dermatological Research)は、皮膚科学分野における世界最大級かつ権威ある国際学会の一つであり、毎年開催される年次総会では、世界中から選ばれた研究が発表され、その内容は学術的にも評価される。このたび、同社の研究成果が採択され、国際舞台で発表の機会を得たことは、同研究の科学的価値と独自性が国際的に認められたといえる。