小林製薬は、2025年5月22日の日本防菌防黴学会第53回通常総会にて、同社研究開発本部 ライフサイエンス研究部 濱田昌子研究員が「日用品の殺菌・抗菌技術ならびに防腐性評価技術に関する研究」において「研究奨励賞」を受賞し、また同時に「角栓内の微生物解析及び角栓内アクネ菌に対する殺菌効果の評価に関する論文」において「論文賞」を受賞したことを公開した。なお、同社における同学会「研究奨励賞」の受賞は、今回が初めて。「論文賞」では22年の第49回学会で受賞を果たしている。
今回小林製薬が論文賞を受賞した論文のタイトルは、「Antibacterial toner exhibits bactericidal effect against Cutibacterium acnes via keratin and sebum plug penetration(殺菌剤配合化粧水は、ケラチンおよび皮脂栓への浸透を介して、アクネ菌に対して殺菌効果を示す)」(Hamada et al (2024) J. Microorg. Control, 29, (2), 63-73.)。
概要:「ニキビは慢性的な炎症性皮膚疾患であり、毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌によりアクネ菌が増殖することが一因と考えられている。同社はアクネ菌に着目し研究を進めており、23年8月にヘパリン類似物質が殺菌剤の効果を高めることを発見した。さらに、ニキビ患者の角栓内にアクネ菌が多く存在することから、角栓内のアクネ菌を殺菌することが重要と考え、その評価法を構築した」
小林製薬では、スキンケア品、オーラルケア品、家庭用品といった幅広い製品において、新たな付加価値の創出や、お客のニーズにいち早く応えるための開発技術を獲得すべく、微生物制御による殺菌・除菌・抗菌技術ならびに防腐性評価技術に関する研究に注力してきた。
同研究を通して、以下のような多岐にわたる研究成果が得られたことを評価され、研究奨励賞の受賞に至った。
・殺菌剤配合化粧水などのアクネ菌に対する新たな作用メカニズムの解明
・口腔内細菌の制御によるオーラルヘルスケアへの貢献
・日用品に応用可能な揮発性有機化合物の抗菌・抗ウイルス性の発見
・靴下の不快臭の一因となる細菌の増殖や臭い産生を抑制する技術の開発
・人工知能による医薬品、医薬部外品、化粧品の防腐性予測技術の開発
これらの研究成果は、ニキビの原因となるアクネ菌の殺菌効果向上、歯槽膿漏に負けない健康な歯ぐきへのサポート、義歯のヌメリ汚れへのアプローチ、液体タイプの持続性抗菌剤の開発、ならびに製品開発期間の短縮などにつながっている。同社は、今後もこれらの研究成果を積極的に製品開発に活用することで品質向上につなげるとともに、より快適な製品をいち早く届けることで、生活の質の向上に貢献していくとしている。
日本防菌防黴学会は、衣食住に関連する微生物とその物質の制御を通じて、生活環境と生産環境の向上を図ることを使命とし、専門領域の異なる研究者や技術者間の交流と情報提供を促進し、総合的な研究体制を確立することで、科学技術の発展に貢献することを目的としている学会だ。
研究奨励賞は、同会の発展に貢献し、今後のさらなる活躍が期待される研究者に対し授与されるもの。なお、受賞資格は以下の通り。
・5年以上にわたって同一テーマの研究を行い、その成果を筆頭執筆者として、原則和文誌(日本防菌防黴学会誌)、英文誌(Journal of Microorganism Control)に5報程度掲載していること(46歳未満)。
・推薦のあった受賞候補対象者から受賞候補者を選考、受賞候補者は理事会の審議を経て、受賞者となる。
論文賞は、1年間で同会誌に投稿された論文の内、最も優れた論文に与えられるものだ。