ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、顔面のたるみ印象に関連することが示唆されている線維構造RL(Retaining Ligament)の研究を進め、以下を発見した。
1.加齢に伴い、皮下組織に存在する線維構造RLが細く断片化する
2.RLの構築に関わる因子Piezo1(機械刺激に応答するメカノセンサーチャネル。RLの構成成分であるI型コラーゲンの産生促進に関わることが知られている)の発現量が加齢に伴って減少する
3.ワレモコウとローヤルゼリーの複合エキスがPiezo1の発現量を高める
本知見は、2025年3月26日~29日に開催された日本薬学会第145年会にて発表された。
肌は、表皮・真皮・皮下組織の3層で構成されており、肌の奥には筋肉や骨が存在する。RLは何層にも重なる組織を横断する線維状の組織で、皮膚を柱のように支える役割を果たしている。目の周りや頬などRLが存在する部位は、加齢に伴い皮膚が重力方向に引き下がる“たるみ”が生じる部位と一致している。このことから、RLの状態とたるみの関連性が示唆されている。しかし、RLの加齢変化については不明な点が残されていた。
今回、皮下組織の深部を含む顔の皮膚組織を用いてRL構造の加齢変化を検証したところ、加齢に伴いRL構造が細かく断片化する様子が確認された(図1)。柱のような役割を果たしているRLが弱く脆くなりその構造が断片化することで、組織を支えきれずに下垂し、たるみ印象につながることが考えられた。
RL構造の加齢変化の検証結果からRL構造の断片化を防ぐことができれば、たるみの印象の改善につながると考えられる。そこで、断片化の要因として線維成分の産生に関わる因子として知られているPiezo1の加齢変化に着目した。年齢の異なるドナー由来のRL構成細胞を用いてPiezo1発現量を調べたところ、加齢に伴い細胞内のPiezo1発現量が低下することが分かった(補足資料1)。このことから、Piezo1の発現量が低下しRL成分の産生量が減少することがRL構造の断片化につながる可能性が示唆された。
RL構造の断片化を防ぐために、RL構成細胞を用いてPiezo1の発現量を高めるエキスを探索した結果、ワレモコウとローヤルゼリーの複合エキスが有効であることを確認した(補足資料2)。Piezo1の発現量を高めることにより、RL成分の産生を促進し断片化を防ぐことができると考えられる。
ポーラ化成工業では、表皮や真皮だけではなく肌の深部に存在する構造にも着目して研究を進めてきた(補足資料3)。今後も肌の全ての領域を対象にし、さまざまな肌悩みに対する解決策を提供するための研究を進めていく。
【補足資料1】Piezo1の加齢変化
RL構成細胞である腱細胞を用いて実験を行った。年齢の異なるドナー由来の細胞についてPiezo1の発現量を確認したところ、加齢に伴いPiezo1の発現量が低下することが明らかになった(図2)。
【補足資料2】Piezo1の発現量を高めるエキス
RL構成細胞(腱細胞)においてPiezo1の発現量を高めるエキスを探索したところ、ワレモコウとローヤルゼリーの複合エキスが有効であることが分かった(図3)。
【補足資料3】関連する過去の研究について
ポーラ化成工業では、たるみに関連する研究として、真皮より深い場所にある皮下組織下部の皮膚支持帯(RC)と呼ばれる線維状の網目構造に新たに着目した研究を行っている。この研究では、皮膚のたるみとの関連性について世界で初めて検討を行い、15年9月21日~23日にスイス・チューリッヒで開催された第23回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)中間大会(Conference)の口頭発表部門において「最優秀賞」を受賞した。その後も、肌深部を対象とした研究を継続し、17年ごろからはRCよりさらに深い場所に存在するRL構造に対しても研究を行い、今回の知見を見出すに至った。