物産フードサイエンス
加水分解水添デンプンの保湿効果に関する研究成果が日本化粧品技術者開始に掲載
物産フードサイエンスは2025年2月4日、糖アルコールの一種である加水分解水添デンプンを用いた保湿効果について研究を進めているが、このたびこの研究成果が日本化粧品技術者会誌(Journal of the Society of Cosmetic Chemists of Japan)2024年第58巻第4号に掲載されたことを明らかにした。
同研究では、界面活性剤と特定の分子量の加水分解水添デンプンを配合したモデル化粧水を用いて、水溶性エモリエント剤としての効果を報告した。従来のエモリエント剤は油性成分が多く利用されており、しばしば「べたつき」「ぬるつき」などの感触の悩みが問題となることがあった。
同研究で明らかとなった知見により、乳液・クリーム・洗浄料など油性成分・保湿成分を含むような剤型においても保湿効果と使用感を兼ね備えた商品設計として加水分解水添デンプン、並びに糖アルコールが貢献できる可能性が示された。
糖アルコールは、スキンケア化粧品原料の中でも保湿剤として主に使用されてきた。化粧品成分による皮膚の保湿効果には、①角層内で水分を「つかむ」②「ふたをする」ことで内部からの水分蒸散を抑える(エモリエント効果)という大きく二つのメカニズムがあるとされている。糖アルコールのような水溶性成分は、①水分をつかむ効果があるとされ、油脂、脂質成分などの油性成分は、②エモリエント効果があると広く認識されている。
今回、日本化粧品技術者会誌に掲載された研究成果の概要は以下の通り。
保湿効果の評価
〈試験方法〉
検体:界面活性剤0・5%と各種糖アルコールを固形分1・4%配合するモデル化粧水
評価者:20〜30代の男女計4名
評価項目:角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)
〈結果〉
分子量の異なる2種の加水分解水添デンプン(HSH)を用いて評価をしたところ、平均分子量の大きなHSH―2(平均分子量1000)配合の化粧水を利用することで、TEWLが最も低く、HSHを含有しない処方(con.)と比べてもTEWLが低い傾向であることが確認された(p=0・068)。
つまり、化粧水に特定の分子量の加水分解水添デンプンを界面活性剤と併用することで、内部からの水分の蒸散を抑え、角層水分量の増加に寄与する、エモリエント効果が確認された。
想定されるメカニズムとしては、界面活性剤が介在することで加水分解水添デンプンが角層内に浸透し、「ふたをする」効果を発揮したと考察される。
糖アルコールとは、トウモロコシに代表される植物由来の原料を起源とし、糖化、精製、加水分解などの工程を経て得られた糖質に、水素を付加(水添)して製造される。単糖の糖アルコールのソルビトール、キシリトール、二糖の糖アルコールのマルチトール、分子量の異なる糖アルコール複合物である加水分解水添デンプンなどがある。糖アルコールは、自然界にも存在し、野菜や果物にも含まれる身近な素材である。
糖アルコールの各物性データ、各種化粧品に対する研究データなど、さらに詳細な情報は物産フードサイエンスのホームページより閲覧が可能。