ライオンは、マテリアルズインフォマティクス(機械学習などの情報科学の技術を用いて、組成・材料開発の効率化を図る技術のこと)を活用し、研究開発における新たな価値創造の加速に取り組んでいる。この度、製品に配合する成分の化学特性に着目し、研究員の知見を組み込んで生成した特徴量(機械学習モデルの構築において、元のデータを加工・変換し、分析や予測に有益な特徴を定量的に表現した数値)を機械学習モデルに導入して、配合組成に期待される品質を予測する手法を新たに確立した。本手法をボディソープの組成開発で検証した結果、新規成分を配合した組成の品質を、従来の手法よりも高精度で予測できる可能性を見出したことから、今後の研究開発のさらなるスピードアップが期待される。
同社は、本研究内容について、2024年12月17~18日に石川県の金沢商工会議所会館で開催された第47回ケモインフォマティクス討論会にて発表した。
発表した演題は、「モジュール構造ニューラルネットを用いた多成分系組成物の外挿予測性と解釈性の向上」。
近年、生活者が製品に求める品質は多様化・高度化しており、生活者ニーズに寄り添った品質の高い製品を開発するために、研究開発の新たな価値創造の加速が求められている。同社では、これまでマテリアルズインフォマティクスを活用し、少量の実験データを起点に組成開発の検討期間を短縮する実験計画手法を開発している。
一方、より高品質な製品を開発するためには、過去の研究データがない新規成分を探索し、その膨大な組み合わせの中から、研究データや研究員の知見に基づいて候補組成を設計し、実験を繰り返すことが必要だった。しかし、新規成分を配合した組成では、得られる品質の特徴やその品質を左右する要因の予測が難しく、一定の検討期間を要していた。
そこで、ボディソープの新たな組成開発に向けて、機械学習の特徴量生成の手法を独自に確立することに取り組んだ。ボディソープの組成開発では、泡立ちや香り、保湿などの使用感の良さ、冬場や夏場の低温・高温条件での品質など、複数の目標を満たすために、多種多様な新規成分やその組み合わせの探索が必要。
本研究では、成分の化学特性に着目し、研究員の知見を効果的に組み込んだ特徴量を機械学習モデルに導入することで、新規成分を配合したボディソープの品質特徴とその影響要因を高精度で予測する手法を確立した。
上記の手法を活用した機械学習モデルにより、新規成分を配合したボディソープの品質を予測した。その結果、過去の研究データがない成分を配合した場合において、開発モデルは従来のモデルよりも予測性能が高く、組成の品質を高精度で予測できる可能性を見出した。
本結果より、新規成分を配合した組成の品質特徴とその影響要因を事前に考察し、研究員の知見と併せて実験組成を仮想スクリーニングすることで、組成開発の迅速化が期待される。今後は、ボディソープだけでなく、さまざまな製品の組成開発にも本手法を応用していく予定である。