世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本における研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンのエバリュエーション・インテリジェンスチーム(製品評価部門)による「ハイパースペクトラルイメージングを用いたメイクアップのカバー力を評価する新しい方法」と題する論文が、2024年9月10日、国際的な化学専門誌である“Frontiers in Chemistry”に掲載された。

この論文はハイパースペクトラルイメージング技術を用いた新しい計測法によって、メイクアップ製品のカバー力を評価する方法に関するものである。従来用いられているイメージング技術では、それぞれの画素の色を構成する赤、青、緑の成分の輝度で測定するが、ハイパースペクトラルイメージング技術はそれぞれの画素の色を構成するスペクトル(可視光範囲のそれぞれの色の波長の強度)で測定し、より詳細な分析を可能にしている。

化粧品のカバー力は単なる不透明性ではなく、製品を皮膚に塗布した後の色の変化、部分的な色の均一性、全体にわたる色の均一性、さらにシミや傷跡を隠す性能などに関係する。研究チームは新たに、製品を塗布した後の色の均一性に関する因子(αHF)と色の変化に関する因子(βSF)を定義し、9名のモデルに3種のファンデーションを塗布して検討を行った。ハイパースペクトラルイメージングで測定した塗布後の色の均一性は、スペクトルの均一性として定義され(αHF)、目視によるカバー力と高い相関を示した。また、塗布後の色の変化(βSF)はスペクトルの変化として定義され、目視での色の変化と高い相関を示した。その結果、αHFとβSFを用いて3種のファンデーションのカバー力と色の影響を比較することができた。

この方法によってファンデーションを始めとするメイクアップ製品のカバー力をより精細に評価することができ、化粧品としての新たな可能性を引き出すことが期待される。