期間限定無料公開(7月26日〈金〉12時まで)

市場活況にひそむ三つの課題

ペット関連市場が活況だ。富士経済によれば、2023年の同市場は前年比9.7%増の6139億円。内訳は、フードが同11.9%増の4754億円、ケア用品が同4.3%増の905億円、生活用品が横ばいの481億円である。市場拡大の要因は、高品質・高付加価値商品の需要拡大。ペットは単なる愛玩動物ではなく、家族の一員の伴侶動物(コンパニオンアニマル)として考えられるようになり、食や健康管理、生活環境など、多様なカテゴリーで質の高い商品、サービスが求められている。この傾向はコロナ禍でさらに高まり、「景気が悪くなっても、ペットへの支出は減らせないと考える飼い主は多い」(ペット業界関係者)。ペット愛が下支えする市場は、今後も右肩上がりの拡大が期待できる。

とはいえ、市場の活況とは裏腹に、ペット市場にはいくつかの問題がある。一つは、ペットの飼育頭数がダウントレンドであることだ。「2023年全国犬猫飼育実態調査」(ペットフード協会)によると、犬の飼育頭数、飼育率、新規頭数は減少し、新規の飼育意向率の低下も続いている。17年に犬の飼育頭数を抜いた猫も、飼育頭数、飼育率、新規飼育意向率は横ばいだが、新規飼育頭数は犬以上に落ちている。一方で、犬猫ともに平均寿命は延びており、人間同様の少子高齢化が進んでいる。健康寿命延伸は人間ともども大きな課題となっている。ペットフード協会の児玉博充会長は「都市化、共働き世帯の増加、ブリーダーの減少などの状況に加え、学校動物の減少など動物に触れ合う機会が減少していることも要因となって、飼育頭数、新規飼育意向率ともに減少している」と危機感をあらわにする。

ペット関連品の品質にも課題が残っている。例えば、ペットフードは農林水産省と環境省の共管である「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」のもと、さまざまな表示義務がある。ただ、食品衛生法ほど厳しくなく、原材料の添加物の表示は任意。法の抜け穴を突いた粗悪品が出回るケースがあるという。シャンプーなどのケア用品も雑貨の扱いのため、化粧品ほど厳しい規制は受けない。飼い主は情報収集を怠らず、ペットの健康を考えた商品を選ぶようにしているから、粗悪品の口コミが拡散したら、ペット業界全体の信頼を損なう恐れもある。

行政による犬猫の殺処分がなくならないことも、積年の課題だろう。近年、引き取り数および殺処分数は減少しているが、22年度は依然として1万頭以上が殺処分されている(環境省発表資料)。22年6月の動物愛護管理法改正でブリーダー規制が強化されたものの、ペットの命を粗末に扱う悪質な繁殖は根絶できていない。ペット業界は解決に向けて、責任意識向上や悪質なブリーダーから購入しないなど、飼い主のペットリテラシーを高めることが不可欠としているが、そのためには啓蒙活動に対する業界全体の姿勢が問われることになる。生活者とペットには多様な接点があるから、より広範かつ明瞭な情報提供を推し進める必要がある。

一連の課題に対してペット業界は取り組みに力を入れているが、さらにアクセルを踏むには「外の視点が必要」との声が後を絶たない。というのも、日本のペット産業は約50年前に生まれ、卸企業やメーカーの努力で今日の発展に至っている。しかし、その一方で、中小事業者が多く、販路も限られていることから、「旧態依然の商習慣が残っており、変化が起こり難い」と、もどかしい思いを吐露するペット業界関係者も少なくない。だから、業界と市場の健全な発展のために、競争を促すプレイヤー拡大は不可欠となっているのだ。