資生堂は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)との共同研究で、肌の状態に関係する身体や心の状態を網羅的かつ定量的に明らかにし、革新的な肌予測モデルを開発することに成功した。また、この新たな肌予測モデルと、同社がこれまで100年以上にわたり蓄積してきた研究知見を融合し、独自の美のアルゴリズムを構築。将来的には2000以上の肌・身体・心の関係性を含むアルゴリズムへと進化させていく予定だ。
これにより、生活者一人ひとりの「なりたい肌」「ありたい姿」を実現するために、化粧品によるケアに加えて、身体や心の状態に着目した生活習慣の提案など、肌・身体・心が調和した状態へ導く新たなアプローチの開発を加速させることが期待できる。さらに、このアルゴリズムは、社会の変化やそれとともに変わりゆく生活者のライフスタイルを反映しながら、社内外におけるさまざまな最新の研究成果を取り入れて進化し続ける。本研究成果の一部は、9月4~7日に開催された「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会」で発表した。
図1 肌・身体・心の関係性解明
今回、肌・身体・心の関係性を明らかにすることを目的に、個人の健康度をさまざまな指標から可視化する「健康関数®」開発などの研究実績をもつ、理研 生命機能科学研究センターの水野敬上級研究員らのチームと共同研究を行った。20~40代の健康な日本人女性を対象に研究を実施し、シミ・くすみ、しわ、うるおいなどの肌の状態を計測したほか、体格・体組成、血中成分、生活習慣および心理指標に関する計測も行った。
肌の状態に、身体や心のどのような要素が関連しているのかを明らかにするために、計測した肌指標を身体指標や心の指標で説明する数式(新規肌予測モデル)の作成を試みたところ、複数の数式を得ることに成功した。
たとえば、肌の角層水分量に関しては、下記のような数式が得られ、角層水分量の多さ/少なさには、身体の酸化ストレス状態、体格、血中電解質(ミネラル)、握力などとの間に関係がみられることが明らかになった(数式1、図2)。肌の状態に関係する身体や心の状態を網羅的に、かつ定量的に明らかにする試みは前例が極めて少なく、今回得られた知見は非常に新規性の高い知見となる。
資生堂は、今回理研との共同研究によって得られた、肌・身体・心の関係性についての知見を原点としながら、同社が100年以上にわたって蓄積してきた知見を融合し、肌・身体・心の関係性を含む独自の美のアルゴリズムを構築した。同社は、「Personal Beauty Wellness Company」の実現に向け、「体内から健康美肌を実現する」、化粧品にとどまらないさまざまなBeauty Wellnessイノベーションの創出を更に加速させているが、このベースとなるのが、今回構築したアルゴリズムだ。
同研究成果を含むアルゴリズムにより、肌・身体・心の関係性が定量的にとらえられるようになり、生活者が自分の肌への理解を深められる測定技術や、これまで以上に精度高く、生活者一人ひとりの「なりたい肌」「ありたい姿」を実現するためのケアの開発・提案が可能になる。
アルゴリズムは、社会の変化や、それとともに変わりゆく生活者のライフスタイルを反映しながら、今後新たに社内外で明らかになっていく最新の知見を取り入れつつ、将来的には2000以上の肌・身体・心の関係性を含むアルゴリズムへと進化していく。