6月、7月とソウルに足を運んだ。ほどよい気温と湿度で、街を散策するのも楽しい。観光地の明洞は外国人が戻り、韓国人の友人は「コロナ前のようだ」と驚いていた。政権交代を経て、北朝鮮一辺倒だった政策は日米重視へと変化。購買意欲が強い中国人観光客はまばらだったが、それでも街の活況を喜んでいた。

未来を悲観的に捉える韓国人は多い。2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数・暫定値)は0.78で、1970年以降で過去最低。OECD加盟国の中でも最下位であった。特にソウルは深刻で、数値はさらに低くわずか0.59。このままでは国が、街が消えてしまう。その危機感は強いのだが、対策は進んでいない。「現政権は景気優先」と友人は言う。

韓国の40代女性によると、昔ほどではないが、嫁姑問題は根深く、相変わらず結婚を避ける要因になっている。教育熱は依然として高く、小学校が終わると校門に塾のバスが横付けされる。子どもたちは塾に通わなければ友達ができず、孤独になる。親子ともに嫌でも塾通いを選ばざるを得ないという。40代女性は「塾禁止の時期もあったが、韓国社会は変われなかった」と口を閉じた。

一方、人口問題解決のウルトラCとして、北朝鮮との統一を挙げる人もいる。安い人件費も手に入る、と冗談を言う韓国人もいた。日本の少子化も深刻だが、このような奇策はない。どのような取り組みが足元で進んでいるのか。次号で特集する。

月刊『国際商業』2023年09月号掲載