2023年3月1日付でP&Gジャパンの新社長にヴィリアム・トルスカ氏が就任した。同社は3月2日に都内で記者懇談会を開催。トルスカ新社長が今後の戦略について説明した。

トルスカ社長はスロバキア共和国出身の46歳。16年から3年間、P&Gジャパン執行役員マーケットストラテジー&プラニング兼ホームケア事業代表として日本に赴任。19年からシニアバイスプレジデント-南アフリカ共和国、21年からシニアバイスプレジデント-サブサハラ アフリカ地域担当(アラブ首長国連邦/ドバイ首長国)を担当した。

トルスカ社長は日本に赴任した3年間を振り返りつつ、「日本の消費者は世界で最も製品への要求水準が高く、付加価値を迅速に見極める賢さがある。日本でスタートしたトレンドが世界を駆け巡る事例も多い。神戸のイノベーションセンターを中心に、日本の消費者のために商品開発を行っていきたい。世界のイノベーションを日本に取り入れること、あるいは日本で開発したイノベーションを世界で展開できることがP&Gの強みだ」と語った。

スタニスラブ・ベセラ前社長が務めた7年間は一貫して成長を持続した。例えば、日本のファブリックケア&ホームケア市場は同時期に11%伸長。P&Gブランドもその2倍のスピードで急成長を遂げ、同社がカテゴリーの成長をけん引したといえる。

トルスカ社長もこれまでの戦略を継続し、「カテゴリーの成長加速が使命である。特にP&Gブランドがナンバーワンのカテゴリーの成長が重要だ」と指摘。製品、パッケージ、ブランド・コミュニケーション、店頭施策、価値提供の五つの重点領域で競争優位性戦略の具体化を進める方針を示した。

競争優位性戦略の事例としては、1粒をつまんで洗濯機に入れるだけの簡便性でヒットした「ジェルボール」、日本で開発されてグローバルに展開しているジョイの「逆さボトル」、トルスカ社長が日本赴任時に携わり思い入れが強いというトイレ内の気流を生かして防臭・消臭効果を持続する「ファブリーズ トイレ用消臭剤」を紹介。店頭施策においては、Trax社と協働で商品棚の画像認識による棚割りの最適化を推進すると説明した。

P&Gは社会との関わりも重視しており、その中核であるE&I(イクオリティ&インクルージョン)戦略では、引き続きジェンダー、LGBTQ+、PwD(障がい者)の三つの柱で展開。今後LGBTQ+の消費者がより快適にショッピングをするための新たな取り組みを発表する予定という。サステナブルな取り組みでは、プラスチックゴミの100%リサイクル・リユースや詰め替え容器のリサイクル化を目指すほか、SK-Ⅱのガラスボトルのリサイクルプログラムも全国規模で推進する。

最後にトルスカ社長は「最も重要なのは人材だ。自分が上の立場に上がったら、そのエレベーターを下げて、下の人たちを育成することを忘れてはいけない」と語り、世界的な人手不足が課題となる中、P&Gで働きたいと思ってもらえる環境づくりが必要と指摘。「日本の人材は実行力や消費者のインサイトを理解する力が優れている。リーダーとして社員を成長させる努力をしていきたい」と、人材の獲得・育成に力を注ぐ意欲をみせた。

月刊『国際商業』2023年05月号掲載