化粧品の苦戦を映す日系小売業の現状

日本の化粧品はシンガポールで苦戦している。日系小売業の戦略が、それを物語っている。2017年12月にシンガポール中心街のオーチャード通りに1号店を置いたドン・キホーテ(現地名:DON DON DONKI)は、22年10月16日に14店舗目となる「DON DON DONKI Northpoint City(ノースポイントシティ)」店をオープンした。場所は北部最大の商業施設「ノースポイントシティ」の地下1階。商業施設に直結する地下鉄「Yishun(イーシュン)」駅は集合住宅に囲まれており、文字通りのベッドタウン。ドンキのターゲットはローカル客である。新店の特徴は食品特化型であることで、特に総菜の品ぞろえが豊富だ。一方、化粧品の売り場は店の奥にひっそりとある。棚は5本だけで、商品はPB「情熱価格」ばかり。オーチャード店も化粧品売り場はメインフロアにない。わずかだが有名なNBも並んでいるが、その横ではPBを大々的に訴求している。両店とも食品目当ての客であふれており、ドンキの食品強化は功を奏している。シンガポール事業の責任者は、今後も食品強化を明言。「(ノースポイントシティの時は)めちゃくちゃな取引条件を提示された」(化粧品業界関係者)というから、ドンキは化粧品を見限ったのだろう。

背景には、シンガポール市場の競争激化に伴う日本ブランドの存在感低下がある。英国の植民地だったシンガポールは、もともと欧米、特に英国のトレンドが色濃かった。そこに日本ブームが到来し、木村拓哉などが登場するテレビドラマが一世を風靡した。しかし、10年代からは韓国ブームに火が付き、いまや男女を問わず、オシャレの代名詞は韓国のセレブリティである。昨今は台湾、中国も攻勢をかけている。シンガポールでは、巨大資本の欧米、トレンドをけん引する韓国、勢いを増す台湾と中国に、日本ブランドは押され続けている。「メイドインジャパンの品質で韓国風のトレンドを楽しみませんか、と生活者に訴えなければいけない」「現地社員が考える販促策は、韓国タレントを起用する案ばかり」と日本ブランドを取り扱う現地企業は悪戦苦闘している。

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