ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、血管の周皮細胞について研究を行い、肌の赤みの目立ちに関わる以下の2点を明らかにした(図1)。

① 血管の収縮・拡張制御に必要な「周皮細胞と血管の接着」を促進する遺伝子の発現が低分子のヒアルロン酸によって低下してしまう

② ①の遺伝子発現の低下は、ワレモコウエキスとルイボスエキスの混合物によって抑制できる

ポーラ化成では、肌の見た目の赤みの原因として、血管の周りを覆う周皮細胞に着目。肌の赤みが気になる原因として、体温の変化や炎症等で血管が拡張して血液の赤みが目立ってしまうことが知られている。血管の収縮・拡張の制御には、血管を覆うように存在する「周皮細胞」の関与が報告されており、この細胞が何らかの理由で血管に接着できず離れてしまうと、血管が拡張することで見た目の赤みに繋がってしまうと考えられる。そこで同研究では、周皮細胞の接着性が低下する原因と、それを回復させるエキスについて探索を行った。

その結果、低分子ヒアルロン酸が周皮細胞の接着性を下げていた ことが判明。血管の周辺環境の悪化が周皮細胞の接着性に影響を与えるのではないかと考え研究を進めたところ、酸化ストレス等によってヒアルロン酸が壊されてできる「低分子ヒアルロン酸」が、周皮細胞の接着促進遺伝子の発現を抑制することを突き止めた(図2、オレンジ)。つまり低分子ヒアルロン酸の存在が、周皮細胞を血管に接着させにくくしていると考えられる。

さらに研究を深堀し、接着性を回復させるエキスを発見。低分子ヒアルロン酸が存在しても、周皮細胞の接着性を回復できれば、血管の収縮・拡張を制御できると考えられることから、培養した周皮細胞を用いて探索したところ、ワレモコウエキスとルイボスエキスの混合物が有効であることを見出した(図2、青)。これにより、見た目の赤みに対して周皮細胞を介した新たなアプローチを提供できる可能性が示唆された。

周皮細胞と血管の壁を形成する内皮細胞は、それぞれの細胞が分泌する因子とそれを受け取る受容体を介して接着性を高めている(図3)。同研究において周皮細胞の接着性の指標として用いた因子は次の2種類である。

① アンジオポエチン1(Angiopoietin1)

周皮細胞が分泌する因子。内皮細胞がこの因子を受け取ると、周皮細胞との接着を強化する。

② PDGF受容体β

周皮細胞にある受容体。内皮細胞から分泌された血小板由来成長因子(PDGF; Platelet-Derived Growth Factor)を受け取る役割を果たす。
PDGFを受け取った周皮細胞は、内皮細胞と接着するために、内皮細胞の周りに集まる。

この受容体が少ない時は、周皮細胞が内皮細胞の周りに集まらず、周皮細胞が少ない血管になることが報告されている。