めっきり秋らしくなった。早朝や夕方は気温、湿度ともに下がり、過ごしやすい。もちろん、しばらく残暑だろうが、それでもマスク着用の不快感が軽減されるのはありがたい。ただ、脱マスクの加速には半信半疑。手洗いやうがい、マスク着用が風邪の予防に効果があることは、コロナ後の生活で身に染みて理解している。マスクなしの顔を見せるのが恥ずかしいと感じる女性の気持ちも強くなっているそうだ。コロナ対策としてのマスク着用は緩和されるだろうが、それが即、脱マスクにならないのは業界人の一人として複雑な気持ちになる。化粧品メーカーの決算を見ると、マスク着用が市場に与える影響の大きさは一目瞭然。マスクはせず、日常生活を取り戻した欧米市場の実績は軒並み良く、日本市場の数字が戻らない。各社の市場見通しも弱気になり、市場復活が遠のいたことも残念でならない。だが、各社の決算から勇気を得たこともある。それはいずれの企業も下を向くことなく、構造改革や新需要創造などに積極果敢に動いていること。化粧品業界には旧態依然の仕組みやルールが残っているが、コロナを機に変わるかもしれない。各社トップの前向きな言葉に背中を押されるのは社員ばかりではない。意外と、化粧品業界の未来は明るいんじゃない? と秋の味覚を楽しみながら語り合おうと思っている。

月刊『国際商業』2022年10月号掲載