マンダムは2021年2月1日、社長交代の人事(21年4月1日付)を発表した。これまで代表取締役社長執行役員を務めていた西村元延氏は、代表取締役会長に就任。そして、取締役常務執行役員を務めていた西村健氏が代表取締役社長執行役員に就く。
トップ交代の理由は、理念に基づいたありたい姿「VISION2027」の実現に向け、変革・挑戦期となる新中期経営計画のスタートを機に、経営体制の強化を図り、企業価値向上を目指すためとしている。
今回の人事により、マンダムは代表取締役2名体制になる。その他の役員人事については、後日発表される予定だ。新任代表取締役会長と新任代表取締役社長執行役員のコメントは以下の通りである。
新たな立場でガバナンスの強化に貢献する
新任代表取締役会長・西村元延氏
1995年6月社長就任以来、四半世紀もの長きにわたりご支援とご協力を頂き、また支えて頂いた多くの皆様方に対し深く感謝申し上げます。
私の社長在任中で、当社は全員参画のもと「生活者発・生活者着のオンリーワンマーケティング」の推進により日本やアジアでの男性グルーミング行動の創造、また当社グループの海外展開強化によりアジアでの化粧品市場の拡大にも貢献し、幅広いお役立ちを実現して参りました。
また、90周年を迎えた17年の節目の年に、企業の使命である理念を再構築し、27年の創業100周年を見据え、夢である「VISION2027」を策定しました。このビジョン実現にむけた最初の3カ年である「基盤整備期」を終え、次の「変革・挑戦期」が始まるこのタイミングで新体制へと移行します。図らずも、コロナ災禍により、グローバルの社会・生活者の変容は一段と加速しております。大きな変化はゲームチェンジを起こせるチャンスでもあり、21年4月1日より新社長にバトンを繋ぎます。
新社長、西村健はこれまで他社および海外グループ会社での経験、当社での経営戦略担当、マーケティング統括としてグループ全体でのグローバル化を推進してきました。また、今後さらにグローバル化が進む社会には欠かせない多様性への受容力もあり、創業以来受け継いできた精神や企業文化、すなわち理念への深い理解や、中長期的な視点で経営を担う使命感を強く持っており、社長としてグループ全体を牽引するのに最もふさわしい人物であると考えています。
私は、4月1日からは代表取締役会長として、新たな立場で更なるガバナンスの強化に貢献すると共に、取締役会および新社長率いる執行チームをサポートして参ります。
今まで以上に人を見つめ、人の心に寄り添い、新たなお役立ちを創造する
新任代表取締役社長執行役員・西村健氏
代表取締役社長執行役員を拝命するにあたり、指名委員会および取締役会からの信頼と期待に感謝すると共に、一方では重責に身が引き締まる思いです。
マンダムグループは、1927年の創業以来、変革と挑戦の積み重ねによって、事業を成長させてきました。現在、世界の人口構成比においてもミレニアル世代以下が6割を超え、デジタルを軸にしたボーダレス化はますます進んでいます。この激動の時代だからこそ、受け継がれてきた変革と挑戦への姿勢がより重要だと考えます。ポジティブな見方をすれば、日本国内での事業、そして60年以上にわたるアジアでの海外事業を基盤に新しい価値を生み出し、全世界の生活者にお役立ちできる絶好のチャンスです。
このタイミングでバトンを受けとり、大きな社会の変化にグループ全体で対峙し、競争力を高め、長期的な成長を実現する企業にして参りたいと思います。
我々の理念は「人間系」を根幹に、人が人の心を動かすことを想像し、進化するテクノロジーを賢く活用しながらも、人間ならではの五感や感情、感性を何よりも大事に新たな価値を創造していくことです。
生活者の日常のささやかな充足感や幸せの実現、そしてその先の社会を持続可能且つ豊かにする企業へと進化すべく、今までの枠組みにとらわれず、社内外の方々と手を携えながら、今まで以上に人を見つめ、人の心に寄り添い、新たなお役立ちの創造に邁進します。
グループ全体で理念を実現するため、経営陣、全社員とともに変革と挑戦を続けて参ります。
なお、西村健氏は、常務執行役員に就任時、国際商業の取材に以下のように答えている。
父は父、僕は僕。僕という個で認識される人間にならないと意味がない
「--現社長の次男。マンダムに入社すること自体、大きな挑戦だったのでは。
西村 これほど大きなチャレンジはありません。私は、子どもの頃から祖父や父の背中を見て育ちました。直接的には両親に、広い意味でいうと、マンダムに育ててもらったのですから、会社への愛着は人一倍強い。自分が成長していく過程で、例えば、海外に行ったとき、店頭に日本で売られているのと同じギャツビーの商品が並び、現地の生活者が手を伸ばす瞬間を見たときは、言葉にできない不思議な感覚が湧き上がってきた。その体験は、いまでも忘れられません。だから、マンダムが社会と生活者に対して、お役立ちができる会社として、ずっと生き続けることがベストだと思っています。
--憧れの経営者はいますか。
西村 すごい決断をする人だ、と思うことはありますが、特定の経営者はベンチマークしていません。昔から、自分は自分らしくいないといけない、と強く思ってきたからです。それは父である西村(元延)社長に対しても同じ。社内外の方々から昔の父に似ているといわれたら終わりなんです。父は父、僕は僕。これはとても大事なことで、僕という個で認識される人間にならないと意味がない。何十年後、マンダムの歴史を振り返ったとき、西村健というコンテンツが書ける存在にならないと、面白くないですよね。
--しかし、お父さんから受け継ぐべきものもあるのでは。
西村 強い信念、思い、考え方を持っていることは同じです。こんなこと父と話す機会は滅多にありませんが、社長としての父を見ていると、自らの意見は持っているのに、全社員の意見が出尽くすまで、全員の言葉を聞くまで、発言せずにじっと待ちます。社長の意見を表に出したら、それで決まり。議論が深まらないことを意識しているのだと思いますが、私は自分の意見を積極的に話すタイプですから、周囲の意見を引き出す父の姿から学ぶべき点は多いです」
インタビュー全文「マンダムの挑戦(全3回)https://kokusaishogyo-online.jp/2018/10/10946」
西村元延氏の略歴は、以下の通り。1951年1月9日生まれの70歳。1977年4月、マンダムに入社。83年4月、東日本地区営業部長、84年6月取締役、87年6月常務取締役、90年6月代表取締役副社長、95年6月代表取締役社長、2004年6月代表取締役社長執行役員。
西村健氏の略歴は以下の通り。1982年5月12日生まれの38歳。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を05年3月に卒業。 IESE Business School 経営学修士(MBA)を持つ。マンダム入社は08年4月。10年4月、マンダムシンガポール出向。13年4月人事部、15年7月人事部欧州駐在(IESE Business School〈スペイン〉在籍)、17年5月IESE Business School(スペイン)MBA課程修了。同年7月執行役員就任(経営戦略担当兼経営戦略部長)、18年4月常務執行役員就任マーケティング統括(第二マーケティング部、グループマーケティング戦略部、広報部、新規ビジネス開発室担当)、19年6月取締役常務執行役員就任 マーケティング統括(第二マーケティング部、グループマーケティング戦略部、広報部、新規ビジネス開発部担当)、20年4月取締役常務執行役員 マーケティング統括(ダイレクトマーケティング部、グループマーケティング戦略部、広報部担当)。