日本発の技術であり、革新的な触媒技術である「MA-T(エムエーティー: Matching Transformation System)」の今後の応用技術開発を後押しするとともに、その産業創造による経済効果や社会問題解決の可能性を探ることを目的に、一般社団法人日本MA-T工業会が12月1日に発足した。これに伴い同日、同工業会が発足記者会見を開催した。
冒頭あいさつに立った川端克宜理事(アース製薬社長)は、同工業会設立の目的について説明。その軸となるのは、幅広い応用が期待されるMA-Tの普及と価値向上だ。除菌剤はもちろん、ライフサイエンス、エネルギー、素材開発、建設、繊維、農業、化粧品などにかかわる幅広い企業38社が参画し、世の中を変える可能性を持つMA-Tを活用していく。
「工業会加盟企業の英知を結集して、オールジャパンでの科学技術向上や世界規模で感染症対策に貢献するMA-T活用プラットフォームとして多くのイノベーションを推進していきたい。新型コロナに対して安全性と有効性をもって活用が期待される。これを克服したのち、来年開催を予定している東京2020でも貢献できると信じている」(川端理事)
川端克宜理事
続いて登壇した安達宏昭専務理事兼事務局長(dotAqua社長)は、MA-Tおよび日本MA-T工業会の概要について説明。酸化制御技術であるMA-Tは、活性化の強弱を制御することができるため、広範な応用展開が可能な仕組みとし、日本MA-T工業会はMA-Tの普及と価値向上、MA-T活用のプラットフォーム構築、オープンイノベーションの推進による科学技術の向上、MA-T産業の創造を目的に設定する。事業内容はMA-Tに関する①調査、研究②情報発信③認証制度。現在、アース製薬、アズワン、エーツケア、帝人フロンティア日本カーリット、日本電子、三井化学など38社が参画している。
従来、安全性と除菌力はトレードオフの関係にあったが、MA-Tは安全性と効果を両立する全く新しい除菌システム。大阪大学においてMA-Tの水性ラジカル精製機構が解明され、制御された水性ラジカルが必要な時に必要な量だけ精製する仕組みになっている。また、安定性にも優れ、菌・ウイルスがなければ水性ラジカルは消費・生成されず安定に存在するため、長期保存、つまり備蓄が可能だ。
抗ウイルス活性評価においては、SARSコロナウイルスに対して液体濃度100ppmで98.22%を阻害。MERSコロナウイルスでも100ppmで99.82%、C型肝炎ウイルスで100ppmで99.96%、デングウイルスで100ppmで98.70%、サルロタウイルスで200ppmで98.10%阻害することが判明。新型コロナウイルス(COVID-19)でも50ppmで99.98%阻害することが明らかになっており、期待は大きい。
一方で安全性においては、第三者検査機関による安全性試験の結果、経口毒性試験、吸入毒性試験、金属腐食試験などの結果は水と同等レベルと、極めて高い安全性が認証されている。
安達専務理事兼事務局長は、「産業界での幅広い応用が期待される。MA-T活用のプラットフォームを構築し、異分野融合型のオープンイノベーションを推進し、世界に発信していきたい」と意気込みを語った。
安達宏昭専務理事兼事務局長
大阪大学大学院薬学研究科の井上豪教授が、MA-Tを用いた化学および理化学機器への応用について説明。MA-Tを用いることでよりたんぱく質の構造解析のスピードを飛躍的に高めることが可能になり、たとえば創薬研究の効率化につながる可能性などを示した。加えて、直近で実施している新型コロナ対策として応用している基礎研究について発表。除菌消臭剤としての機能および構造解析を加速できる技術を活用し、「新型コロナウイルスに対抗することに鋭意取り組んでいる」(井上教授)現状を示した。
大阪大学大学院薬学研究科井上豪教授
そのほか参画企業によるパネルディスカッション、アース製薬によるMA-Tを用いた新製品の紹介、MA-TでSDGsに貢献する事業戦略に関する説明があった。
参画企業によるパネルディスカッション
MA-Tを用いたアース製薬の新製品